片思い２ (ページ26)

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「……じゃ、なんで昌磨には隠さないの？…なんで泣いたりするの？」

「え…」

突然昌磨くんの名前が出たことに驚いて顔を上げると、低く、怒りを堪えたような声が降ってきた。

「俺には嘘ついて笑うのに、昌磨の前でなら泣けるの？」

あの公園で泣いた日の事を言っているんだとやっと理解した。
どうしてそれをゆづくんが知ってるの？
驚いて見開いた目に気付いたように続けられた言葉。

「昌磨に聞かれた。何かあったのかって……」

泣くつもりなんてなかった。
それでも、理性が追いつかないくらい頭の中がひどく混乱してた。

「聞かれても何も応えられなかった。Aが泣くほど辛いことあっても、俺の前では笑うから。
どうしていいのかわかんなくなるよ。すげーイライラする、自分にもAにも」

苛立ちを隠さないその言葉ひとつひとつが胸に突き刺さる。
切ない痛みが止めどなく襲ってきて、高ぶる神経に追い打ちをかける。

「ごめんなさい……。でも……どうしていいのかわからない……から……」

駄目。我慢して。
理性が叫んでも、押し寄せる感情の波に飲み込まれてしまう。

「だったら黙ってないで言ってよ。なんで泣くほどつらい思いしてるのに一人でどうにかしようとするの？
俺って何？なんのために傍にいるの？」

なんのために？そんなの私が聞きたい。
どうしてそんなに優しくするの？
スケートの先輩だから？仲間だから？単純に友達だから？
私はそのどれもがうれしくて、だけどつらい。

「もう……構わなくていいから……ほっといて……」

「何言ってんの？ずっと一緒にやってきた仲間じゃん！」

同じアイスショーに出る仲間。
スケートで繋がれた友達。
なにより大切なその全てを心の奥底では壊してしまいたいと願っていた自分がいた。
認めたくなくて必死で足掻いて……矛盾した思いに翻弄されて本当の自分を見失いそうになる。

　
「ゆづくんには関係ない！」

瞬間、ゆづくんの綺麗な目が傷付いたように揺れる。

そんな顔させたくないのに……どうして私はこんな事しか言えないの……。

「……関係ないとか……言うなよ…」

押し殺したその声に、やり場のない悲しみが込み上げる。
純粋に仲間として認めてくれてるのに。
だからこそ、この想いを許して欲しいなんて、言えない……。
その笑顔を失いたくないだけなのに……。

ただ想うことがこんなにも残酷で悲しいってこと
ゆづくんに会うまで知らなかったよ。

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