片思い２ (ページ25)

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「なんで、そんな風に笑うの？」

紡がれた言葉には静かな怒りが感じ取れて、胸を突かれる。
掴まれた手首が熱い。

「何……？どうしたの……？」

冗談を許さない気配に、それでも緊張する自分を見せたくなくて意味がわからないフリをする。

「A、もういいよ……」

「……何が？よくわかんない」
　
それ以上聞きたくない、心に踏み込まないで。
弱い自分を見つけないで、お願いだから。
震えそうになった腕を振りほどこうとするけど、一層強く掴まれる。

「無理して笑うなって言ってんの」

そんな言葉に背筋が冷えていくのを感じた。
必死に取り繕ってきた筈のもの全てが、音を立てて崩れ落ちるみたいに……。
絡み合った視線。強すぎるゆづくんの目に射抜かれて痛くてたまらない。
怖い……。

「無理なんてしてない！」

自分でも驚くほど大きな声だった。
それはまるで悲鳴のように静まりかえった控え室に響いた。
高ぶってくる感情と沸き上がる恐怖が全身を支配していく。

「離して」

振りほどいた腕。そのまま背を向けようとしたけど、

「A！」
　
今度は肩を掴んで強引に引き戻されてしまう。
逃げだしたい、頭の中にはもうそれしかなくて必死で目を逸らした。

「なんで逃げんの？無理してないなんて嘘じゃん。
そのくらい俺にだってわかるよ、バカにしてんの？」
　
苛立った大きな声は容赦なく私に向けられる。

「A！目逸らさないで、ちゃんとこっち見てよ」

逃がさない。
強く肩を掴んで離さないゆづくんの手からは、そんな意志が伝わる。
もう、どうしていいかわからなくなっていく。
彷徨う視線冷えていく指先溢れそうになる想い。

「ホントのこと言ってよ。なんで俺にまで嘘つくの？」
　
「………………」

「そんなに俺じゃ頼りにならない？
　Aが何か辛いことがあるなら、なんとかしてやりたいって……思ってる。
　理由知りたいって思うのは俺のわがまま？」
　
なんとかなんて出来ないよ。
理由を言えば全部壊れる。
嘘をつき通すことでしかこの関係は守れないんでしょ？
大事なものを失いたくない。
ゆづくんに……そんな目で見てたんだって……ガッカリされたくない。
軽蔑されたくない。

「……誰かに寄り掛からないといけないほど、……私は弱くない」

半分自分に言い聞かせるように溢れ出た声は、情けなく震えた。
保っている心のバランスが今にも崩れてしまいそうだった。

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