片思い２ (ページ22)

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７２◇羽生くん視点ページ22

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「なんでもないって電話切られたけど、そんなわけないじゃん。
　気にするなって方が無理なんだよ、あんな声殺してしんどそうに泣かれたら」

もう、それ以上言うなよ。聞きたくない。
認めてしまった感情は、止めどなく心を侵食していくようだった。

「それ、俺以外に絶対言うなよ……」

「は？言わないよ。っていうか、ゆづくん……なんか怒ってる？」

「怒ってねぇよ」

荒げた声にそんな言葉はすぐに嘘だと知れる。

「怒ってるじゃん。なんなの、もう～。ゆづくんもAも、わけわかんね」

「こっちだってわけわかんねぇよ、全然……」

勢いづいた言葉は止まらずに溢れた。

「……落ち付いてよ。とりあえず、どんな理由かは突っ込まないけど、俺だって心配してるんだよ。
　Aも子供じゃないし、自分の中でなんとかしようって思ってるのかもしれないけど、
　ゆづくんがこのままほっとくんだったら、俺が聞くよ」

「…………」

「こないださ、俺が彼女と別れてめっちゃへこんでたとき、あいつに『俺は俺のままでいい』って言われて。……なんかすごい嬉しかったんだよね。
在り来りな言葉といえばそうなんだけど、Aに言われたから嬉しかったのかもなーって。
だから、何があったか知らないけど、今度は俺が支えてやりたいって思うし」

昌磨の言葉にはAを大事に思う気持ちが溢れていて、それが悔しくて、同時にひどく切なかった。
大事に思う気持ちは俺だって同じだった。
昌磨に劣ってるなんて少しも思わない。

　
「……まぁ、それだけ言いたくて。そろそろ戻ろっか…」

「ごめん…、先帰ってて。ちょっと頭冷やしてから戻る」

「ん、ちゃんと帰ってきてよ」

そう言って俺の手からコンビニの袋を受け取った昌磨はゆっくりと公園を後にした。
薄暗い街灯の下には、俺だけが残された。

　

気付き始めているAへの想いに、戸惑って、迷って、持てあまして……。
それでも、願いはただひとつだった。

　
Aには笑っていて欲しい。
嘘の笑顔なんかじゃない、本当の笑顔で……。

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