片思い２ (ページ12)

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６２◇羽生くん視点ページ12

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＜act.12＞

【side-Ｙ】

「おはよーございまーす」

リンクに着くと、すでに練習を始めている皆と挨拶を交わす。
休憩の合間に数人で喋っているノブくんを見つけて声を掛けた。

「昨日、バッグ届けてくれてありがとー」

「ああ、うん。持ってったのAちゃんだけど。会わなかったの？」

「え、あ……うん……」

そう曖昧に返して見つめたAの背中。
他のスケーターの一人と笑い合って上下に揺れる肩は、相変わらず華奢で細い。

ドアノブに掛かっていたバッグに気付いたのは、彼女を送り出した時だった。
鳴らなかったインターホン。
もし鳴っていたとしたら、それはそれで気まずい状況ではあったけど、何も告げずに帰ったAに、なんで？って思ってしまう。
俺と顔合わせたくなかったってこと？
それがたとえばノブくんだったとしたら、きっと「黙って置いてくなよ～」なんて文句のひとつも軽く言っているところだけど
Aとの間にまだ引きずってる気まずさから、そんな軽口も叩けない。

　

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