片思い２ (ページ11)

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どのくらいそうしていたのか、バッグの中で震えるスマホに気付いて我に返った。
見れば表示されていたのは見知った名前で、通話を押したのは、誰かの声を聴きたかったからなのかも知れない。
　

『もしもしー？』

　
出だしの声はいつもだるそうに間延びしている。

　
『お～い、聞こえてるー？』

何も返さない私に繰り返される呼び掛け。

『Aー？ Aちゃーん？』

「聞こえてる……」

『なんだ、聞こえてるんだったら早く返事してよー。一瞬、間違ったかと思ったじゃん』

　
そう言って笑った昌磨くんの声はいつも通りで、それは変わらない日常で。
なのに自分だけが取り残されて、どこか別の場所にいるような気がした。

『ひょっとして、寝てた？』

「寝てないよ…」

『……大丈夫？なんか、死にそうな声なんだけど。今、家？』

「……ううん、近くの公園……」

『公園？一人で？』

「うん」

『A、こんな時間に一人って、危ないでしょ』

本気で心配そうな昌磨くんに力なく笑って返した。

「別に危なくないよ。誰もいないもん」

『バカ！こんな遅くに危ないに決まってるじゃん！もう少し危機感持たなきゃだめでしょ！大体Aは……』

珍しく神妙な声で説教じみたことをいう昌磨くんに、なんか、いつもと逆じゃん、なんて思う。

『俺、今からそっち行くから。どこの公園にいるの？』

「えっ……」

落ち込んだとき、誰かに優しい言葉を掛けられると、嬉しい反面不安になった。
その言葉に縋って自分が弱くなっていくような気がするから。
ゆづくんがみせる惜しみない笑顔も、さり気ない優しさも、失いたくない、愛おしいそんな全てが、どんどん私を弱くしていく。

　
『A？』
　

また滲んできた涙。
涙腺が壊れたのかな……。
昌磨くんの声に答えることもできない。

『A……泣いてる？』

漏れた嗚咽に気付いて、かけられた声は心配そうで……。
なんでもないと答えてみても白々しい嘘に聞こえたに違いなくて……。
これ以上昌磨くんに心配を掛けるのが嫌で

「ごめん。もう切るね。おやすみ」

『ちょっ、A……！』

まだ聞こえていた声を無視して強引に通話を切った。
　

結局、何の用事だったのかも聞かないままだったことに気付いたけど、もう一度かける気にもなれず、また泣いた理由を聞かれても答えることは出来ない。

そっと電源を落とすと見上げた夜空。
淀んで曇ったそこには、星なんて見えなかった。

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