片思い (ページ50)

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５０◇羽生くん視点ページ50

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「何へこんでるん？」
　
腰に手を当てて大きくため息をついていた俺に声を掛けて来たのはノブくんだった。

「ん、この曲の振り付け意外と難しくない？」

「ん？あー確かになぁ。まあでも、とにかく練習あるのみっしょ？」

「まあね」

曖昧に返事を返す。
努力してどうにかなるものなら、この苛立ちの理由はとっくに解けているはずだ。
ねぇ、ノブくんならわかったりする？
なんて、絶対聞かないけど。そんなのはプライドが許さない。

「あれ、Aは？」

「ああ、トイレ行くって」

「また？さっきも行ってなかった？」

「うん……。水分ばっか取り過ぎだって」

冗談っぽくノブくんは笑ったけど、心配してるのは痛いほどわかる。
俺だって同じだから。
Aが理由を言おうとしない以上、強引には聞かない。
大人としての距離感を保つ暗黙の了解ではあるけれど、痩せていくAを見ていると、それも限界なんじゃないかと思う。
なんでもないと笑うAに、俺の方も限界だった。

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