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「ねぇ、なんで？ 最近おかしいよ、なんか時々Aが何考えてるのかわかんなくなる」
そういって反らされた視線。
もうこの場に居ることすら許されないような気がして、逃げるなんてずるいってわかってるのに、足は後ずさってしまう。
「ごめん……帰る」
そのまま、キッチンを飛び出していた。
一秒でも早く、ゆづくんの前から消えたかった。
「あれ、Aちゃん？」
早足で通り抜けた通り抜けたリビングで織田くんの声が聞こえたけど、応える余裕なんてなくて、乱暴にバッグを掴むとそのまま玄関を目指した。
「Aちゃん、帰るの？」
背後ではまた誰かの声がしていたけど、無視して扉を開ける。
気付けば非常階段を下る足は走り出していた。
「わっ！」
階段を踏み外して反射的に掴んだ手すり。
その冷たさでやっと我に返る。
傾いた身体から一気に力が抜けてその場に座り込んだ。
息があがって苦しい。一体何階まで下りたのかすらもわからない。
「あぶな……。こんなんで怪我しちゃったら……もっと最悪だよ……」
押し寄せる自己嫌悪に目元が熱くなる。
泣くなんてずるい。自業自得のくせに。
何もかもが上手くいかないような気がした。
ゆづくんを想うことで狂っていく日常。
眠れない夜と張り詰めた心。
苦しくてたまらなかった。
やめられるものならやめたい。
こんな想いなくしてしまいたい。
だけど、どんなに願っても
確実に大きくなっていく存在は
いつだって私を翻弄する。
好きだから
好きだけど
抜け出せない迷路の中で
こんな自分消えてしまえばいいのに。
最低
耳鳴のようにゆづくんの言葉が繰り返し響く。
「…っ」
膝に顔を押し付けて、溢れそうになる涙を必死でかみ殺した。
そのあと、どうやって家まで帰ったのか、ひどく記憶は曖昧でよく憶えていなかった。
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作者名：mirin | 作成日時：2021年3月6日 15時
