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案の定、屋上、貯水タンクの下に寝っ転がっていたのはそいつだった。
「高杉、何してんの」
「…あ?」
目つきの悪いそいつが、今日は特別やつれた顔をしていた。白い月が綺麗な、そんな朝。まだ九時にもなっておらず、夏の朝の蒸し暑さに生温い風が頬を撫でる。
「…授業、なんで出ねェの」
まだ満月にはなっていなかった。
満月から少しだけ欠けた、欠陥品。まるで私のようだった。
人並みになれなかった。幸せにもなれなかった。自分を愛せなかった馬鹿な私に、こんなに綺麗なお月様が、似ているだなんて。
滑稽な話だ。何の夢だよ。
「何を考えてんの、お前は」
腹の読めないこの男は、いつも妙にのらりくらりとしている。どこか遠くを眺めて、何かに想いを馳せる。
私から言わせてみればこの男は、生きることに長けた人間である。根の強い人間というのは基本的に飄々としているのだ。何を考えているのかわからないのは、他人に言わずとも己が信念を既に持っているからだ。
私とは正反対のコイツ。
私はコイツの態度が気に入らない。だけど、コイツの見つめる先の光景が好きなのだ。白い月だったり、青空だったり、時には泣いている空だったり。
翡翠の目が映す光景に魅せられるのは、何も私だけではない。またちゃんや万斉、武市もきっとそうなのだ。だからこんな男を慕っている。
「…別に何も考えてなんざねェよ。それより、……なァ桜田、」
「何」
「おめェこそ、」
「何を隠してやがる」
お天道様の白い光と、夜道を照らす白い月光、魅せられたのは、どっちだ。
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ティアー(プロフ) - *天 神*さん» 閲覧ありがとうございます!更新スピードは遅いですが頑張りますのでどうぞよろしくお願いします! (2018年9月2日 20時) (レス) id: baa942cd57 (このIDを非表示/違反報告)
*天 神*(プロフ) - 初コメ失礼します。面白いです!文才がすごすぎです。更新楽しみにしてます、頑張ってください。 (2018年9月1日 0時) (レス) id: 537ce569f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ティアー | 作成日時:2018年8月29日 12時