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「……そしてそれから、彼女が私の前に姿を表すことはなかった」



おしまい。


まるで、どこかの国の悲しい童話を語るかのように、餓鬼は話を綴じた。
どこかあっけらかんとした口調に思わず息が漏れる。




「……それで、その姉ちゃんとやらが今回の件とどう関わってるってんだ?」



女は口の端をほんの少しだけ上げて、月を見上げた。綺麗な月に吸い込まれそうになる。




「……もしかしたら、偶然、なのかもしれないけどね。


姉さんがいなくなったのは、満月の前の日だった。そして、私がこっちに来てしまったのも」




……あァ、今日の月は、明日には満ちるであろう、満月よりほんの少し欠けた月だった。





「………まさか」

「ここに来るまでに、見たんだ。かぶき町の飲み屋街で。あの人の背中を」




綺麗な月が見下ろしていた。






だから。

銀さんに依頼をしたい。




女が頭を下げた。





「まず一つ。姉さんを探すのを手伝って欲しい」
「二つ目。どうやったら私が元の世界に戻れるのか、探すのに協力してほしい」




「……わァったよ」




こんな悲しそうな顔で頼み込む餓鬼の願いを折るほど俺は鬼じゃない。




「しっかし、どうやって探すつもりだ?ここは江戸だぞ」
「…それは明日聞き込みに行くしかないだろ」





おいおいマジかめんどくせ、なんて呟いたらまた何かを言われることが目に見えていたので、ほんの少しだけため息をついた。




「…しゃあねえな。ま、夜も遅いからもう寝ろよ。色々考えんのはまたあとだ」


ぽん、とその頭に手を置いて俺は部屋に戻った。




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ティアー(プロフ) - *天 神*さん» 閲覧ありがとうございます!更新スピードは遅いですが頑張りますのでどうぞよろしくお願いします! (2018年9月2日 20時) (レス) id: baa942cd57 (このIDを非表示/違反報告)
*天 神*(プロフ) - 初コメ失礼します。面白いです!文才がすごすぎです。更新楽しみにしてます、頑張ってください。 (2018年9月1日 0時) (レス) id: 537ce569f0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ティアー | 作成日時:2018年8月29日 12時

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