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姉さんの泪。あまりにも美しいそれは、私なんかに拭えるようなものじゃなかった。姉さんの悲しみも苦しみも、稚拙で馬鹿な私じゃ抱えることなんてできなかった。
姉さんを救いたかった。
私なんかじゃ救えなかった。
不甲斐なくて仕方がなかった。
その日、結局姉さんは私が寝るまで起きてこなかったから、私も起こさず、毛布を掛け直してベッドに入った。
眠れない夜がまた明けていく。
夜明け前の真っ暗な空。
何百回の夜を超えて得た答えなんて、
たかが知れていた。
朝日に背を向けては布団を被り、明日を拒んだ。
姉さんの苦労を背負えない自分が不甲斐なくて情けなくて、考えてみれば私は、姉さんに何かをしてあげた覚えがなかった。
いつだってあの人は自分の全てを私に捧げてくれたのに、私は何もできなかった。
今日の月はきっと満月だ。
未完成な月が満ちてゆく様より、完成した月が欠けてゆくのを見る方が好きだった。
「朝だ……」
お天道様が照らすのは、私の惨めさだけだ。
リビングに出てみてから気付いた。
「あれ、姉さん……?」
姉さんがいなかった。
つい昨日あんなことがあったものだから、私は酷く焦って彼女を探した。
「姉さん!?姉さん!姉さん!」
彼女の寝室にもいなかった。
出かけたのかと思ったけれど、鞄も靴も携帯も置きっ放しで。
ただ、空っぽのソファとクシャクシャなままの毛布が転がっていて、そこにはもう、彼女の体温は残っていなかった。
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ティアー(プロフ) - *天 神*さん» 閲覧ありがとうございます!更新スピードは遅いですが頑張りますのでどうぞよろしくお願いします! (2018年9月2日 20時) (レス) id: baa942cd57 (このIDを非表示/違反報告)
*天 神*(プロフ) - 初コメ失礼します。面白いです!文才がすごすぎです。更新楽しみにしてます、頑張ってください。 (2018年9月1日 0時) (レス) id: 537ce569f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ティアー | 作成日時:2018年8月29日 12時