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私が10歳のとき。
母さんと父さんは知らない車に轢かれ、私たちの前を去った＿＿＿＿。
だけど、あんまり実感は湧かなかったし、私には常に姉さんがいた。親がいない私に、寂しい思いをさせないように、他の子と違わぬ優しくいい子になってくれるように。
「姉さん＿＿＿＿」
母さんと父さんのお通夜が終わったあと、棺桶の前に立っていた姉さんを不安げに私は見上げる。姉さんが悲しさを取り繕うように笑った。
姉さんが酷く悲しがっていることも、私がくるまで人知れず泣いていたことも、その時の私には気付かなかった。今思えば、姉さんはずっと引き攣った笑みを浮かべていたし、何もかもが終わり、誰もいない会場でたったひとり、肩を震わせていたのを思い出す。
姉さんがしゃがみ、目線を私に合わせて私の両肩に両手を置いた。
「……A、心配するな。お前は私が立派に育てる。大丈夫だよ。何も怖いことなんかないんだ。母さん達は今、遠いところにいるけれど、姉さんがその代わりになるからね」
私にがばっと抱き着き、私をぎゅっと抱き締める。少しいつもより力が強くて、私を離さないように、私の存在を確かめるように抱き締める彼女に、私は呑気に「痛い…」なんて呟く。
母さんや父さんがいなくなったこと。実感なんてわく筈もなく。
目の前に並ぶ冷たい体を、父さんや母さんの抜け殻だなんて思うことも出来なかった。
白い死化粧をしたその人たちは、私の母さんと父さんによく似た別人。そんなことを考えていたような気がする。
……だって、あの人たちは、母さんと父さんみたいに笑わないもの。母さんと父さんみたいに温かくないもの。
「大丈夫、大丈夫。姉さんがいるからね。だからお前は幸せになるんだよ。姉さんと一緒に母さん達の分までも」
「姉さん……？」
姉さんが鼻声だった理由や、肩を震わしていた理由、私の肩に透明な染みがついていた理由なんて、私にわかるはずもなかった。
だって姉さんは、私の前で泣いたことなんか一度だってなかったから。強くて優しくて強かな私の姉さん。
だから、私に姉さんを慰めることなんてできなかったのだ。
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ティアー(プロフ) - *天 神*さん» 閲覧ありがとうございます！更新スピードは遅いですが頑張りますのでどうぞよろしくお願いします！ (2018年9月2日 20時) (
レス) id: baa942cd57 (このIDを非表示/違反報告)
*天 神*(プロフ) - 初コメ失礼します。面白いです！文才がすごすぎです。更新楽しみにしてます、頑張ってください。 (2018年9月1日 0時) (レス) id: 537ce569f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ティアー | 作成日時：2018年8月29日 12時
