16 ページ17
.
「……わからない」
「どういうことアルか?」
「…さっき、気付いたらあそこの神社に倒れてた。なんでこんな場所にいるのかもわからない」
神楽が眉を顰め、少し考える素振りをして私の方をみた。
「…行く宛はあるアルか」
「ない」
「ついてくるヨロシ。私、万事屋やってるネ。依頼くれればなんでもするヨ」
「…ありがとう」
歩き出す藤色の傘の彼女についていく。
橙色の灯火に群がるのは蛾だ。お月様の光さえ消えてしまいそうな明るさに、目が眩んだ。
酔狂な街と、火照った頬を揺らしながら歩く人々。夜の街。眠らない街とはよくいったものだと、遠くに薄ら明かりを零す月を見上げた。
暫く歩いた先。
賑わう夜の街を抜けた先の、スナックやら団子屋やらが並ぶ街並みの先で、彼女は歩みをとめた。
「万事屋…銀ちゃん…」
「そうネ!ここアル!入るヨロシ」
古びた階段を登って、扉を開けた彼女に続く。
銀ちゃんという単語から、やはり浮かび上がるのはそのひと。
坂田銀八である。神楽も姉さんもいるのなら、彼がいても何らおかしくはなかった。
「銀ちゃん!新八!ただいまヨー、依頼客連れてきたアル!」
「えっ!?お客さん!?」
「客!?おい神楽!どこだ!」
奥の部屋から出てきたふたり。
紛れもない、私の担任と級友。ぱっつぁんと銀八だった。
「ぱっつぁん…、銀八…、お前らも、なんでここに、…」
着流しを着た彼と、やはり着物を着た彼。
見慣れた彼らがこんな格好をして、肩書きさえ変えてこんなところにいることに困惑した。
.
9人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ティアー(プロフ) - *天 神*さん» 閲覧ありがとうございます!更新スピードは遅いですが頑張りますのでどうぞよろしくお願いします! (2018年9月2日 20時) (レス) id: baa942cd57 (このIDを非表示/違反報告)
*天 神*(プロフ) - 初コメ失礼します。面白いです!文才がすごすぎです。更新楽しみにしてます、頑張ってください。 (2018年9月1日 0時) (レス) id: 537ce569f0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ティアー | 作成日時:2018年8月29日 12時