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酷くなった頭痛と吐き気。せめて少しだけでも腹の足しになるものを食べておこうと、すりおろした林檎を口にしたが、嫌な不快感にむせて、結局吐き戻してしまった。
夜、カーテンを開けて窓越しに空を見上げる。
綺麗な月。
もうすぐ、満月がくる。
満月とともに、何かが変わってしまうような気がした。それがいいものなのか、悪いものなのかなんて、見当もつかないけれど。
「……腹減った」
お腹は空くのだ。異常な程に。
疲れもあって、もう動くのもしんどい。
今すぐ眠りたい衝動に駆られる。
…なのに。
胃がものを受け付けない。嫌な汗と激しい鼓動が、眠ることを許さない。呼吸をするのもだるいほどだった。
昼間は寝ていたが、それでも徹夜明け位の眠気、怠さが体を襲う。保健室でも、寝ていたと言うよりは気絶していたという方が正しかった。
見上げた満点の星空。
月のもとに集う星々は、まるで宝石箱の中身をばら蒔いたような美しさだった。
これを永遠に形にして、本当に宝石箱に詰めてしまいたい、とふと思う。
揺れる視界。
意識がどこか遠くで揺れているような感覚。
…まるで、
スクリーン越しに世界を見ているような、
そんな感覚だった。
「…はっ、…だりィ……、私のことがそんなに気に入らねえのかよ……、」
私は、この世界に存在を拒まれている。
牙を剥いたライオンに、こんなに小さな羽虫で勝てる訳がなかった。
歪む世界の色に、自分の激しい呼吸音が谺する。息が苦しくて、嫌な汗が背中を伝った。
ついに立っていることができなくなり、私は窓にもたれかかって座り込んだ。
冷たい床に頬を預けて、
ひっそりと、苦しいままの意識を手放した。
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ティアー(プロフ) - *天 神*さん» 閲覧ありがとうございます!更新スピードは遅いですが頑張りますのでどうぞよろしくお願いします! (2018年9月2日 20時) (レス) id: baa942cd57 (このIDを非表示/違反報告)
*天 神*(プロフ) - 初コメ失礼します。面白いです!文才がすごすぎです。更新楽しみにしてます、頑張ってください。 (2018年9月1日 0時) (レス) id: 537ce569f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ティアー | 作成日時:2018年8月29日 12時