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その鬼の足元には女性の死体が転がっている



Aは目を剥いて怒鳴り散らした


行き場のない怒りがそこにあった

誰にも救えない悲しみだった






「貴様ッ!!殺してやる!!!
ずっとお前を探していた!!!
よくも!!!よくもッ」


よくも、紫乃さんを





鬼はAの方をみて首を傾げる







「ん?……あ!思い出した!
俺にお姉さんを食べられそうになった子でしょ!」




刀の柄に手をかけ直すも、手が震えて刀が抜けない

殺してやりたいのに、冷や汗がとまらない





「ふふ、久しぶり
美味しそうになったねぇ
……まあ稀血じゃないのは残念だけど、可愛い女の子はみんな食べたげないと」




爪の先まで寒気が覆う


蠢くそれは、Aの痛みだった


消えてなくなることなどない
かさぶたになった傷を何度もめくって
塩を塗りたくって

忘れたくなかった
その痛みの名前を







……ああ、私が殺すのだ

わたしが

私が紫乃さんの仇を、




可笑しいな

怖くて怖くて仕方ない
吐きそうなほどの憎しみが痛い

なのに私、こんなに落ち着いてるんだよ





彼女の菫色を思い出す

もう、声すら思い出せなくなっていた彼女の





ゆっくりと呼吸を整える







「……全集中・夜の呼吸、宵の明星」




瞳を閉じて

その大きな気配に刀を向ける




回転をかけ、回るようにその頸に刀を振り下ろした







「……っ、!」




頸が、切れなかった




鬼は余裕そうに笑っている






「……へえ、いい太刀だった、今のは
下弦程度なら余裕で殺れるんじゃない?」





どうして

なんで


私は強くなった



此奴は十二鬼月ですらない



なのにどうして





「……どうして、って?簡単だよ
俺はね、鬼舞辻無惨の呪いを、解いたんだ、自分で」

「……っ!?」





「ふふ、面白いな、やっぱり君は
ねぇ、次はさ、お姉さんも連れてきてよ
やっぱり家族は一緒がいいでしょ?一緒に俺の腹の中で仲良くすればいい」




鬼が私の刀を掴み、下に下ろさせる

そして、手を振りあげた






「…ッグ、いヅ…!!」




背中が焼けるように痛い





「あ、あとさ、覚えといてよ俺の名前
俺、緋汐っていうんだ─────」





ぼやける視界の中、その言葉を最後に意識を手放した





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陸→←肆



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作者名:ティアー | 作成日時:2019年9月29日 15時

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