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「…紫乃さんの訃報は聞きました
………ごめんなさい、あの日、私が彼女を招いたばっかりに」



俯いたしのぶさんが、きっと眉間に皺を寄せた
地鳴りのような低い声が震えている






「……いえ、しのぶさんのせいではありません
……全部、あの鬼と」


守れなかった私のせいだ




苦しいんだよ


あなたがいないと気づく度

空気が喉を締め上げるの


忘れられるわけないだろ

幸せになれるわけないだろ


………ねえ紫乃さん
何とか言ってくださいよ





しのぶさんは痛ましい目をこちらに向けている

ああやめてくれ
これじゃまるで私が間違ってるみたいだ





「……しのぶさん、」

「…っ、なんですか」

「カナヲは元気にしていますか」
「へ?」



不意打ちの質問に、彼女は一瞬呆けた声を上げた


「あ、ああ、カナヲなら元気ですけど……カナヲのことも知っているんですか」

「…………いいえ」




知らないんです

私は彼女のことを何一つ知らない

たったひとつも





幸せにしているだろうか



それは彼女にしかわからないから

しのぶさんには聞けなかった







守れなかったものばかり
後悔ばかりだ


たくさんのものを捨ててきたのに

それでも
両手に抱えた少しの宝物さえ落ちていく

私は

わたしはもう拾い上げるのに疲れてしまった




.

拾→←捌



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作者名:ティアー | 作成日時:2019年9月29日 15時

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