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鏡花が敦の隣に寄り添った
鏡花「予感があった」
敦の手に触れながら、鏡花は静かに云った
鏡花「私がこの男を斃さなくては、きっと貴方がこの男の前に立つと。そして、どちらかが命を落とす死闘になると。……奈穂さんを、拐おうとしていると。………ご免なさい」
敦「大丈夫だ、鏡花ちゃん」
敦は鏡花の手を優しく握った
敦「僕は死なない。君の傍にいる。もう二度と、君を一人で闇の中に沈ませはしない。それに、奈穂さんはもう僕達を置いていかないよ」
鏡花はその言葉を聞くと、敦の手を小さく強く握りしめた。闇の中で、唯一垂らされた命の手綱を握るように
鏡花「闇の中も怖くない。貴方と一緒なら」
芥川は目を細め、二人の姿を凝視した
一人でも苦戦したマフィアの異能者相手に、二対一。それも敵の拠点の中で。増援が来ても可笑しくない。それでも芥川の声には微風の動揺もない
芥川「闇の組織で身を寄せ合う、心優しき殺人鬼たち、か」
嘲弄するように芥川は云った
芥川「泣かせる話だ。だが、ここに来る迄に僕も調べを済ませた。"ポートマフィアの白い死神"に"三十五人殺し"。──────忌まわしき呼び名だ。血塗られた手を幾ら繋ごうと、互いの体温を伝えることは出来ぬ」
敦「そうかもしれない」
敦は静かな目で云った
敦「だとしたら、お前と銀さんも、体温を伝え合うことは二度とできないな。勿論、奈穂さんとも」
芥川「……貴様……！」
芥川の周りで布が大蛇のようにのたうつ
芥川「銀の手が血塗られているとすれば、それは貴様等に誘拐されたが故だ……！奈穂は自ら手を汚した訳ではない。貴様等が脅した為、やりたくもない人殺しをしていた…！」
芥川の外套が変化し、獣の姿へと形を変えていく。獣が怒りを宿して震えている。敦はそんな衣獣と芥川を黙って見た
敦「お前は勝てない。僕には鏡花ちゃんがいるが、お前は一人だ。誰もお前の味方をしない。お前の敗因は、その孤独だ。………鏡花ちゃん」
鏡花は小さく頷き、携帯電話に耳を当てる
鏡花「夜叉白雪。敵を斃し、私とこの人を守って」
鏡花の細い声が携帯電話に向けられた。夜叉が刃を構えて、芥川へと向かう
筈だった
鏡花「…………？」
夜叉白雪は武器を構えない。鏡花の後方で、揺らめきながら浮いているだけだ
鏡花「夜叉白雪？」
鏡花は夜叉を見て、携帯電話を見た。画面が暗い。……
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作者名：るーりん | 作成日時：2022年12月29日 0時
