＃１５ ページ16
あなたside
広々とした工藤邸を探索する。
本当に広い。
キッチン、応接間、書斎...たまに、ドアに手をかけるとどこからか沖矢さんが現れて、
「入っちゃだめですよ」
と笑いかけられる。
きっとどこからか監視しているのだろう。怖...
そこそこ探索し終わったので、与えられた自室に籠もることにした。
客間であろうその部屋のふかふかなベッドに寝そべる。
つ、疲れた...
純粋な疲労感にため息を吐く。
思ったよりも順調に話が進んで良かった。
かの名探偵と優秀な捜査官の協力が得られ、こうして拠点もできた。
突然この世界にやってきたにしては及第点だろう。
それにしてもこのベッド本当にふかふかだな...
暖かな微睡みに誘い込まれそうになっていると、ドアがノックされる。
「Aさん、少しいいですか？」
誘われるがままに後をついて行くと、ある部屋に招かれた。
所狭しと並べられた機器は何に使うのか...
まぁ盗聴でしょうけれども。
「彼女のことは？」
キョロキョロとあたりを見渡していると急に問いかけられる。
“彼女”とはきっと、灰原のことだろう。
「ずっと聴いているんですか？」
耳元をたたくジェスチャーをすると、彼は「知っているんですね」と呟いた。
知っている。それが彼女を護るためだということも。
「それより、私の前でもずっと沖矢昴のままなんですか？」
ずっと気になっていたことを告げる。
私知ってるのに。疲れないのかな。
単純な疑問だった。
誰かを偽るってすごく大変なことなんだと今日知ったから。
「ホー...沖矢でなくてもいいと？」
挑発的な笑み。
「もちろん。どうぞ」
「君がそう言うならそうしよう。だが...そうだな」
一歩、踏み出される足。
「まずは確かめなければならないことがある...」
ヒクリと自分の喉が鳴った。
彼の動きと一緒に後ずさる。
が、すぐに背中に堅いドアに阻まれる。
死んだ...と思った。
目の前には、綺麗なエバーグリーンが広がっていた。
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作者名：真 | 作成日時：2018年3月18日 0時
