#14 ページ15
コナンside
「って訳で、全知の女性がやってきたぜ」
「あなたねぇ...」
博士と灰原に事の顛末を説明すると、案の定灰原が呆れたようにため息をついた。
「ほんとに信用できるんでしょうね、その人。ただでさえ胡散臭い大学院生が住んでるのに、更に怪しい人を連れ込むなんて...」
「こらこら哀くん...」
博士が宥めると、灰原が少し考えるように黙り込む。
まぁ、疑うのも仕方がない。
だが中々興味深い人物であることは確かだ。
俺が工藤新一であることを知っているのは今のところ、博士、灰原、そしてあの怪盗だけのはずだ。
もしあの女性が組織の人間だとしたら、とっくに俺達は殺されているだろう。
わざわざ秘密を抱えていることを打ち明けてまで近づいてくる必要はない。
「ねぇ、」
「どうした、何か他に気になることでもあんのか?」
「そのひと...あの薬のことを知っているのよね」
「ああ、でも知ってるのは存在だけみたいだぜ」
恐らく灰原が考えていることはきっと俺と同じだ。
アポトキシン4869の解毒剤作成について。
これだけのことを知っているならば...
博士のところに来る前に聞いてみたが、「ごめんね、知らないの」と悲しそうな顔をされてしまった。
全知といっても限りあり。
どうにも持っている情報に偏りを感じる。
「そう、まぁ私は変に関わらないでおくわ」
何があるかわからないしね。
そう言い残して灰原は自室に消えた。
慎重な灰原らしい判断だ。
「博士、俺もそろそろ探偵事務所に帰るぜ」
「おぉ、気をつけてな」
博士の家を出て、工藤邸を見上げる。
やけに長く感じた一日だった。
今日をそう振り返って俺は帰路についた。
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作者名:真 | 作成日時:2018年3月18日 0時