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安室side
カツカツと、自分がハンドルを叩く音がやけに響くような気がした。
工藤邸から少し離れた場所。そこにRX-7を停めて風見からの連絡を待つ。
いつもなら、人物照会などすぐ終わる。
ものの数分で片付く仕事のはずだが...
工藤邸の様子を伺ってはいるが、あの少年がいるのだ。
用心深く、隙がない。
赤井秀一の尻尾はなかなか掴ませてくれそうになかった。
微かな疲労感に目頭を抑えた時、ポケットに入れたスマートフォンが振動する。
風見からの着信。
彼女の情報についてだろう。
データの添付ではなく、通話ということは何かあるのか...
「僕だ」
『降谷さん、先程送られてきた写真の女性についてなのですが...』
「あぁ、身元は分かったか」
『分かるには分かりましたが...少々妙なことになっています。データをそちらに添付しますが、その前にお耳に入れておきたくお電話させていただきました』
風見から伝えられた情報に、思わず「本当か」と聞き返してしまった。
今まで部下が間違った情報を寄越したことはない。
しかしこれは...
『本当です。その女性は数年前に死亡した、と記録されています』
例の組織に関する事件で。
付け加えられた言葉に思わず目眩がする。
なんて厄介な女性を連れ込んだんだあの少年は!
『降谷さん?』
こちらの沈黙を怪訝に思った部下が声をかけてくる。
「大丈夫だ。僕のほうでも色々調べてみる。また頼むよ」
『了解しました』
通話が終了したスマートフォンに、データが送られてくる。
戸籍と、簡潔な死亡診断書。
そして、組織と関連していたという報告書。
「これは...ずいぶんと長丁場になりそうだな...」
ひとり呟いた言葉は誰にも届かず消えていった。
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作者名:真 | 作成日時:2018年3月18日 0時