脅威少年と気まぐれ狼さん (ページ5)

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5話ページ5

目が覚めると見覚えのある天井だった。狼さんの家の天井。ふかふかで物凄くあったかい。冷たくてボロボロのあそことは大違い。

ぐるっと横を向くとそこには寝ている狼さんが近くにいて思わず大きな声を出すおれ。

「ううん…嗚呼、起きたのか。おはよう坊や。」

「お、おはよう…？」

「そんな疑問系じゃなくっても。ここはもう君の家なんだから。」

「え…？」

気付いたら狼さんに抱っこされていて、そのまま椅子に座らされた。

「助けてと言ったのは君じゃないのかい？」

「う、うん！言った！」

「だからあの場から坊やを助けたんだ。感謝したまえよ？」

「あ、ありがとう…でも、村はどうなったん？」

「さぁ？でもあそこにはもう戻らない方が良いかもね。不衛生だし。」

そう言って狼さんは体を伸ばすとおれの方を見てきた。

「さて、助けたお礼に何か坊やからないかな？」

「おれい…」

「そうそう！」

「何をあげたらいいのか分かられへん…それにあげられるもんもない…」

「じゃあ名前を教えてくれる？」

「それだけでええんの？」

「私達にとって、坊や含めた人間の名前を知るのはとてもご褒美に近いんだよ。」

そう言う狼さん。
言葉の意味はわからないけど、おれは言われた通りに名前を言った。

「ゾム！ゾムって言うねん。」

「ゾムか。よろしく、ゾム。じゃあ私も名乗らないとね。Aだ。よろしく。」

「A…」

「聞きなれないだろう？」

「うん」

Aさんは狼だ。本人が言ってたし、生えてる耳や尻尾もそう。それに悪魔やって言っていた。

「Aは狼なん？」

「いきなり呼び捨てか…まあいい。そうだ。けど、魔獣の方があってるかな。」

「まじゅう？」

「そう。普通の動物よりも強い存在と思えばいいかな。」

じゃああのお姉さんは一体なんだったろうか。

「ゾムを襲ったのは魔女だよ。」

「お、おれ何も言ってへんよ！」

「顔に出ていたよ。素直に聞けばいいじゃないか。」

そう言ってAはおれの頭を撫でた。
母ちゃんが死んだ時からこうやって名前を呼ばれたりするのは久々でせっかく起きたのにまた眠くなってくる。

「ふぁ…」

「眠いの？二度寝は流石に駄目かな。」

そう言ってAは立ち上がった。おれは立ち上がることが出来ないからまたAに抱っこされる。

「おれ、ずっとAとおるの？」

「何だい？不満かな？」

胸のあたりが何だかあったかかった。