脅威少年と気まぐれ狼さん (ページ16)

今日:5 hit、昨日:2 hit、合計:58,524 hit

16話ページ16

「おれトントンから聞いたんやけどさ。」

「あれ、いつの間に名前聞いてたの？」

「あいつから言ってくれたで？」

人間に対してあんな礼儀正しいんだ堕天使って。とは言え元は天使だしそうだよね。

「Aって、番犬やったの？」

料理をしていた手が思わず止まった。
確かにトントンは言うかもしれない。無知とは怖いものだ。アイツにも口煩く言うなとあれほど言ったのに。

「そうだね。番犬だった。」

「じゃあ、番犬って何するん？」

「地獄の門を見張るんだ。その先は魔王のお城だからね。」

グルッペンとの交流はアイツが息子だったから。昔は可愛かったんだけどな。キラキラした目で良く私を見てたよ。

「じゃあ今もそう？」

「今は違う。追放されたから。」

「何で？」

「うーん、多分私の“気まぐれが”当時の魔王様の癪に触れたんだろうね。」

数百年前に私は迷い込んだ人の子をこっそり下界へと帰した時があった。本来ならば彼は下界では死亡扱いになるが、私はその掟を破ったのだ。
当時の魔王様は掟に忠実とした方だったから、私に番犬としての権利を剥奪した後に下界へと追放した。

「え、な、なんでなん？酷すぎるやん…」

「地獄はね、生きてる時に悪い事をした人間を咎めて善意の人間にする為の反省場所みたいなものなんだよ。」

「じゃあ、天国は？」

「地獄で反省した人が転生する為の準備をする場所。」

刑務所って言ったほうがわかりやすいかもしれないけど相手は人の子だし。言わない方がいいかもね。

「厳しい所やん…」

「そうかもね。」

意外にも追放後のこの生活の方が楽しいし。
人と関わると言う面でも、魔界よりかは不便だが退屈な世界ではないと思う。

その分お仕事は来るけどね。
下界で生活する為のお金貰うから。
人間に化けるのだって魔力使うし。