13話 ページ13
「買い物行かなきゃいけないか〜」
「買い物？」
「そうそう。街に行かないと。」
実に面倒臭いが、ここに住処を構えてしまったからこればかりは土地選びが悪かった自分を憎むばかりである。
「お、おれも行く！」
「それは嬉しいね。頼もうとしてたよ。」
さて人の姿に化けようとしようではないか。
「ゾム、少し顔をよく見せてくれる？」
「うん…」
「どうも。ありがとう。」
頭の中でイメージした後に鏡の前に立って確認する。これで良いんじゃないかな。母親っぽいでしょ。
「じゃあ、行こうか。」
「A…姿が…」
「んん？嗚呼、君の母親っぽいだろう？現に私は君の母親だしね。」
こんな山奥から町へ行くには結構時間がかかる。そんな時は魔法で解決するのが手っ取り早い。
「ゾム〜おいで〜」
「うん。」
「ここに立っててくれる？」
「ええよ。今から何するん？」
「魔法を使う。眩しいから目を閉じてるんだよ。人間は弱いからね。」
呪文を唱えれば一瞬にして裏露地にワープした。そのまま手を引いて表へ出るとそこには沢山の人で賑わった市場に出た。
「町の市場や…」
「そうだよ。ほら、買い物に行くよ。」
小さくて温かい手を握り買い出しに出た。基本あまり市場には行かないから買い溜めしておくのが基本である。だから長持ちする食料を買うことが多い。
農園とか向いてないし。
それに管理とか面倒臭い。枯らしそう。
「おれ、来たことある。」
「そうなの？」
「うん。お使いで…」
売り場の店主から食材をそれなりに買った後の帰り道。そこにはどうやらゾムの顔見知りっぽそうな子供達がいた。多分、悪餓鬼。
「あ、ボロ屋のゾムだ！」
「お、お前ら…！」
「あっれ〜？ボロ屋の筈なのになんでそんな綺麗な服着てんの？」
「さわんなやっ！」
ちょっと目を離した隙にと言う感じだった。跡を付けられているのは分っていたけど。
「いって！お前ボロ屋の癖に生意気だぞ！」
「もうボロ屋やないわ！」
「コラコラ、騒がないの〜」
パッチリとその悪餓鬼と目があった。
「A…」
「ゾム、その子はお友達かな？」
「いや、ちゃうで。」
即答で返した。
どうやら、あの悪餓鬼達の中でのゾムの印象はだいぶ変わったらしく呆然と見ていた。
「じゃあ買い物終わったし帰ろうか。」
「うん！今日の飯は何？」
「飯じゃなくてご飯。そうだねぇ、スープにしようかな。」
人の親子のような会話をして裏露地に入った。
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作者名：更新不定雑飽子 | 作成日時：2020年8月26日 18時
