第234話《惜別》 ページ41
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空。
橙色の空が、頭上遥かに広がっていた。あんなにも重かった身体が簡単に起き上がり、察する。
『……私、死んじゃったんだ』
ここは地獄か。
あの五年間、多くの命を殺めてきた。文字通り死に物狂いだった。自分も、他者も、何もかも全てを蔑ろにしてきた。
こんな人間が行き着く先には、地獄が相応しい筈だ。
「「A」」
静寂を破ったのは、懐かしい声だった。私は弾かれるように顔を上げて、声の主を両の目に映し出した。まさか、そんな……！
『お母さんっ！お父さんっ！』
望んで止まなかった二人の姿に、考える事なく駆け出す。そしてそのまま二人に抱き付くと、温かく優しい手に迎えられた。
二人が地獄に堕ちている筈ない。ここは天国だったのだ。確信を得た瞬間、お父さんが絞り出すような声で「すまないっ」と謝った。
「私達のせいで随分独りで悩ませた。辛かっただろう……」
『二人のせいじゃない！ちゃんと分かってる……大丈夫だよ……』
二人が私を愛しているのだと。二人の愛が私を守ってくれているのだと……そう教えてくれた人を置いて来てしまった。自然と脳裏に浮かんだ彼の顔に、私は歯を軋ませた。
「ねえ。Aはまだ、生きたい？」
『え？』
お母さんの突然の問いかけに、私は動揺した。だってもう、私は死んでしまった。半身がぐちゃぐちゃになって、指先も満足に動かせなくなって。
ああそうだ______最期に見たのは、涙を流す彼の顔だ。あんな顔をさせたいわけじゃなかった。笑って欲しかった。悔いが残るが、死人の私に何が出来ようか。
「余計な事は考えなくていいの」
迷いを察したのか、お母さんは大らかに囁いた。
『……生き……たい』
恐る恐る、小さく呟く。
彼の涙を拭うのも、背中を支えるのも、全部私がいい。私じゃなきゃ嫌だ。口にした途端、押さえ込んでいた傲慢な欲望が次々と溢れ出て来る。言った所で最早叶える術もないのに。
「ありがとう。勇気を出してくれて」
コツンとおでこが合う。え？と目を見開くと、二人は穏やかに微笑んでいた。
「行ってらっしゃい、A。愛してるわ」
「お前を愛してる。ずっと見守っているからな」
その瞬間、地面が大きく波打った。それは膨れ上がり周囲の光を覆い隠した。二人の手が解けていく感覚に、ぐうっと熱いものが込み上げる。
残酷にも狭まりゆく視界の中、私は大きく息を吸い込んだ。
『私も、愛してる_______！』
涙ながらに叫ぶと、ついに全ての光が消えた。
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vanny(プロフ) - Unknownさん» トニー推しの身としては、解釈が合うと言って頂けて一安心です笑これからも頑張って創作に励みますね！素敵なコメントありがとうございました。 (8月30日 12時) (
レス) id: e2f2cf9807 (このIDを非表示/違反報告)
vanny(プロフ) - Unknownさん» このような長い物語を呼んで頂き、本当にありがとうございます。絶対完結させるぞ…！と意気込んで必死に書いて来た日々が報われたような気分です😢私の作品がUnknownさんのお目に止まり、少しでも要望を叶える事が出来ていたのであれば僥倖です。 (8月30日 12時) (レス) id: e2f2cf9807 (このIDを非表示/違反報告)
Unknown(プロフ) - そして、3年という長い年月をかけてまで完結してくれたことと、自分の中でのトニースタークの解釈と本当に一致していたのが嬉しいです笑これからも、素晴らしい作品を生み出してください。 (8月29日 0時) (レス) id: 15fcef644d (このIDを非表示/違反報告)
Unknown(プロフ) - 本当に素晴らしい作品で、一気に読んでしまいました。私もトニースタークの哀しい人生に何か救いがあればいいな、と思っていました。このような本当に素晴らしい作品に出会えた自分の運、そして、作ってくださったことに心から感謝したいです。 (8月29日 0時) (レス) @page49 id: 15fcef644d (このIDを非表示/違反報告)
vanny(プロフ) - stupidさん» お気になさらず〜！日常系ですね！分かりました👍ありがとうございます！ (2023年2月11日 12時) (レス) id: e2f2cf9807 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：vanny | 作成日時：2022年3月16日 13時
