第197話《八つ当たり》 ページ4
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『無駄ですよ、全部』
怪訝な視線を感じたが、お構いなしに続ける。
『復讐なんかしても、あの人達は生き返らない』
テーブルに手を付き項垂れると、とてつもない冷気が辺りに立ち込める。甲高い音を立てて一斉に卓上を侵食していく氷塊を、どこか他人事のように見つめながら私は口を開いた。
『……どうして、帰って来てくれなかったんですか』
独り言のような言葉を放った瞬間、部屋中に動揺が広がったのを感じた。俯くのを止め、私は部屋全体に響くように声を張り上げる。
『スタークさんはずっと此処で、貴方達が戻って来るのを待っていたのに』
ぐるりと周囲を見渡す。誰も彼もが沈痛な表情を浮かべていて、私は薄氷を踏み荒らしているような気分になった。
『サノスはタイムストーンを得た後、タイタン星を出て消息を立ちました。他は何も知りません』
口早に告げ、私は逃げるように部屋を立ち去った。悴んだ指先よりもずっと、心の方が痛かった。
能力を使うにはまだ回復が足りなかったようで、フラフラと頼りない足取りで医務室へ辿り着く。勢い良くベッドへ倒れ込み、私はそのまま瞼を閉じた。
『……っ』
自分が、嫌いだ。
彼らの理由も汲まないで、その優しさを拒否して、あろう事か憂さ晴らしに叱責するだなんて_____ヒーローどころか人間として最低最悪じゃないか。
布団の中で胎児のように蹲り、ただ時が過ぎゆくのを待つ。そして部屋を出て、数分が経った頃だろうか。突然、医務室のドアをノックする音が耳に届いた。
「＿____A」
次いで躊躇いがちに名を呼ばれてハッとする。キャプテンの声だった。
「すまない、一人にしてあげられなくて。予定が決まったんだ……これからサノスを追う。君はここに残って身体を休めていてくれ」
労るような声色に、胸が締め付けられる。「じゃあ……」とこの場を立ち去ろうとする気配に、私はベットを飛び出した。
『キャプテンっ！』
勢い良く扉を開ける。驚いた表情の彼に、私は頭を下げた。
『あんな風に八つ当たりして、本当にごめんなさい！貴方達の事情も知らない癖に……』
「謝らないでくれ」
肩に優しく手を置かれ、私は恐る恐る顔を上げた。するとキャプテンは穏やかに、けれどハッキリと告げた。
「ストーンを探すよ。あの力があれば、彼らを取り戻せるかもしれない」
＊
基地を発つ宇宙船の姿を見送りながら、私は独り窓辺に体重を預けた。温い春の風に吹かれて、サラリと長い髪が頰を撫でた。
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vanny(プロフ) - Unknownさん» トニー推しの身としては、解釈が合うと言って頂けて一安心です笑これからも頑張って創作に励みますね！素敵なコメントありがとうございました。 (8月30日 12時) (
レス) id: e2f2cf9807 (このIDを非表示/違反報告)
vanny(プロフ) - Unknownさん» このような長い物語を呼んで頂き、本当にありがとうございます。絶対完結させるぞ…！と意気込んで必死に書いて来た日々が報われたような気分です😢私の作品がUnknownさんのお目に止まり、少しでも要望を叶える事が出来ていたのであれば僥倖です。 (8月30日 12時) (レス) id: e2f2cf9807 (このIDを非表示/違反報告)
Unknown(プロフ) - そして、3年という長い年月をかけてまで完結してくれたことと、自分の中でのトニースタークの解釈と本当に一致していたのが嬉しいです笑これからも、素晴らしい作品を生み出してください。 (8月29日 0時) (レス) id: 15fcef644d (このIDを非表示/違反報告)
Unknown(プロフ) - 本当に素晴らしい作品で、一気に読んでしまいました。私もトニースタークの哀しい人生に何か救いがあればいいな、と思っていました。このような本当に素晴らしい作品に出会えた自分の運、そして、作ってくださったことに心から感謝したいです。 (8月29日 0時) (レス) @page49 id: 15fcef644d (このIDを非表示/違反報告)
vanny(プロフ) - stupidさん» お気になさらず〜！日常系ですね！分かりました👍ありがとうございます！ (2023年2月11日 12時) (レス) id: e2f2cf9807 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：vanny | 作成日時：2022年3月16日 13時
