第216話《今はまだ》 ページ23
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整理され閑散としている部屋は、主人の帰宅を待っているかのようだった。その人はもう帰って来ないよ、と教える術は残念ながらない。
『ナターシャ』
5年間、彼女には沢山お世話になった。大切な人を、人達を失って自暴自棄となっていた私を、時には叱り、時には支えてくれた。
そうしていつの間にか、"あの人"と過ごした日々よりも長い間を共にしていた。そう。私はまた、家族と呼べる存在を失ったのだ。
哀悼に暮れている暇があれば、少しでも己の役目を果たせと彼女なら言うだろう。分かっている。でも……
『……かえってきてよぅ……っ』
貴女がいないと私、また自暴自棄になっちゃうよ。
怒って、叱ってよ。
ねえ。
「A、入ってもいいか」
ドアを叩く音に、朦朧としていた意識が鮮明となる。部屋の向こうにいる人物が誰なのかも分からないまま、私は返事した。
『スティーブ……』
彼は扉を開けるや否や、目を見開いて「あ、」と言葉を詰まらせた。
「すまない、知らなくて」
『気にしないで。……何か、用ですか』
「いや特に用はないんだ。ただ、君が心配で」
優しい言葉が今はただ辛くて、私は唇を噛み締めて項垂れた。「A」と優しく名前を呼ばれ、ゆっくりと顔を上げる。
『どうして』
「君は僕らの中で一番歳下だし……ナターシャとも仲が良かっただろ」
『貴方の方が長い付き合いでしょう。彼女とは』
「年月は関係ない」
『歳下だしって言った癖に』
軽口を叩かれるとは思っていなかったのだろう。何処か拍子抜けしたような顔をしたスティーブに、私はフッと笑いかけた。
『此処で立ち止まっていたら、きっとナターシャに叱られちゃう。それに言ったでしょ……最後まで一緒に戦うって』
「そう、だな……」
スティーブは穏やかな表情で首肯し、「君は、僕が知らないうちに随分と大人になったんだな」と呟いた。
『私もう23歳だよ。立派な大人です』
「でも……ほんの少し前に勝手に任務に出て、怪我して帰って来たのは誰だったかな？」
『誰ですかねぇ。ちょっ、痛！』
窘めるように額を指で弾かれて、私は仰け反った。超人の握力でデコピンなんて軽々しくしないで欲しい。お返しに雪玉を当ててやると「うわっ」という悲鳴が上がった。
「やったな、こら！」
笑いながら部屋を出る。嘆くのは一旦やめだ______この任務が成功すれば、私が彼女と再開できる日も遠くはないのだから。
想いは全部その時に、直接伝えれば良い。
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vanny(プロフ) - Unknownさん» トニー推しの身としては、解釈が合うと言って頂けて一安心です笑これからも頑張って創作に励みますね！素敵なコメントありがとうございました。 (8月30日 12時) (
レス) id: e2f2cf9807 (このIDを非表示/違反報告)
vanny(プロフ) - Unknownさん» このような長い物語を呼んで頂き、本当にありがとうございます。絶対完結させるぞ…！と意気込んで必死に書いて来た日々が報われたような気分です😢私の作品がUnknownさんのお目に止まり、少しでも要望を叶える事が出来ていたのであれば僥倖です。 (8月30日 12時) (レス) id: e2f2cf9807 (このIDを非表示/違反報告)
Unknown(プロフ) - そして、3年という長い年月をかけてまで完結してくれたことと、自分の中でのトニースタークの解釈と本当に一致していたのが嬉しいです笑これからも、素晴らしい作品を生み出してください。 (8月29日 0時) (レス) id: 15fcef644d (このIDを非表示/違反報告)
Unknown(プロフ) - 本当に素晴らしい作品で、一気に読んでしまいました。私もトニースタークの哀しい人生に何か救いがあればいいな、と思っていました。このような本当に素晴らしい作品に出会えた自分の運、そして、作ってくださったことに心から感謝したいです。 (8月29日 0時) (レス) @page49 id: 15fcef644d (このIDを非表示/違反報告)
vanny(プロフ) - stupidさん» お気になさらず〜！日常系ですね！分かりました👍ありがとうございます！ (2023年2月11日 12時) (レス) id: e2f2cf9807 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：vanny | 作成日時：2022年3月16日 13時
