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「…中り」
心底面倒臭い。潮風の香りが懐かしい港でAは端整な顔立ちを崩さずに内心ごちた。現在の時刻は一時を少し過ぎた頃。夜を牛耳る彼らが動き出す時間だ。ターゲットの男性は黒のスーツに身を包みサングラスを掛けており周りの同僚達と時折話をし乍ら作業を続けている。今日の仕事は積荷運びらしい。
男性の仕事はしがない派遣会社社員ではない。その実、ヨコハマの夜を仕切る組織ポートマフィアの構成員だった。探偵社らしく推理したのかと云われれば言葉に詰まる。Aは男性の職業を聞いた時から構成員では無いかと疑っていた。何故なら、男性が所属していると云う会社は秘密裏にポートマフィアの傘下にあるからだ。
以前は別の会社に勤めていたと依頼人からの情報だが、恐らくそこから引き抜かれたとAは見ている。然し其れにしても弱った。依頼人に貴方の彼氏は浮気ではなくマフィアですよだなんて告げても佳いものなのだろうか。Aは悩んだ結果、証拠写真を撮り国木田達に相談する事にした。何かあれば彼らを頼れと太宰が云っていたのだ。
却説、見つからない内に退散するかとAは音一つ立てずにその場から静かに去った。
「国木田さん」
「どうした、今日も張り込みじゃないのか?其れとももう音を上げたか?」
「見てください」
朝、国木田が出社するとそこにはAが居た。普段より些か早いAの出社に驚くが、昨日己の問いを無視して出て行ったAに思う処が無い訳がない。揶揄う様に返事をするが気に止めた様子もなくピッと数枚の写真を渡された。
何時もの笑顔で国木田を見つめるAに、何なんだと密かに苛立ち乍ら写真に目を落とす。
「…之はどう云う事だ」
「見たままです。ターゲットの男性は此のヨコハマを牛耳るポートマフィアでした」
「… … …一寸待て」
はあああ、と深い溜息をついて眉間に手を置く国木田にまあそう為るだろうとAは内心国木田に同情した。何せ新人が初めて担当した仕事が関わりたくない組織NO.1に入るであろうポートマフィアの案件だったからだ。何故こうも面倒事が舞い込んで来るのだと呟く国木田は心の底から頭痛薬を欲していた。
少し経って漸く回復した国木田はAに怪我はしてないだろうな、と遅めの心配をする。掠り傷一つ負っていませんと返したAに其れなら良いかと国木田は今度は安堵の溜息を漏らした。
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緑猫(プロフ) - ねこまろ。さん» 修学旅行お疲れ様です!更新された瞬間だなんて嬉しいです!応援もありがとうございます!更新頑張ります! (2018年5月23日 16時) (レス) id: 457e9c6f45 (このIDを非表示/違反報告)
ねこまろ。(プロフ) - 修学旅行でこの作品から3日も離れていました。悲しいです。いつも更新された瞬間に見に行ってるのに……。あと、猫音からねこまろ。に名前を変えました!名前変えてからも応援し続けますよ!うっとうしいぐらいに、ずっと応援します!更新ファイトです! (2018年5月23日 15時) (レス) id: 4738577f15 (このIDを非表示/違反報告)
緑猫 - 猫音@底辺さん» そこまで楽しんで頂けていると思うととても嬉しいです!ありがとうございます!!頑張ります! (2018年5月6日 22時) (レス) id: 457e9c6f45 (このIDを非表示/違反報告)
猫音@底辺(プロフ) - 最近の楽しみがこの小説を読むことです(笑)僕、いつも楽しみにしてるんで、これからも頑張ってください! (2018年5月6日 15時) (レス) id: 4738577f15 (このIDを非表示/違反報告)
緑猫 - 蒼さん» ありがとうございます!頑張ります!! (2018年5月3日 16時) (レス) id: 457e9c6f45 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:緑猫 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=92287f70ddf83f82a39ea7c9d0c473c7...
作成日時:2018年4月7日 15時