episode53 ページ5
霧島side
俺が向かった先は墓地だった。西洋風の白い墓が立ち並ぶ。ここにはAの生みの親の墓がある。
そこは海の見える小高い丘の上にあって彼女もよく足を運んでいるはずだ。確かここら辺に、その墓があったはず、
霧島「A？」
ぽつりとたっている小柄な影を見つける。走って逃げようとするから、俺は焦って腕を掴んだ
A「離して」
霧島「そう言われて離すンだったら最初から掴まねぇよ。」
Aは俺に背を向けたまま何も言わない。
霧島「俺を置いてくのかよ、」
A「...離して」
断固拒否と言ったわけか。俺はAのことを後ろからそっと抱きしめた。体格差もあってスッポリと俺の腕の中に入る。
A「！！ッは、離せって」
霧島「少しくらい話聞いてくれよ、俺が、冗談でこんなことするやつに見えんのか？お前にも俺にも仕事でいた男女は数しれず、でも俺にはAだけだと思ってた。それも俺だけだったみたいだけど」
Aは何も言わない。逃げようと暴れることもしなくなった。
霧島「なァ、Aにとっての組って、俺って何だったんだ？」
返事は来ない、
A「...で、」
霧島「へ？」
な、泣いている？
A「なんで、私はあなたにそんな顔をさせたかったんじゃない。あなたが笑えるように、組がこれからもあああれるように、私には心が無いから、私は弱虫だから」
霧島「そんなことない、絶対有り得ない。Aの組から離れる言い分はわかった。認めないけど、
思いやりだって立派な心だ、俺にはお前みたいに誰かを思って動くのは苦手なんだ。尊敬してる
それに
悪魔だった俺に心を教えてくれたのはAだよ」
うっ、ぐずっ、と涙声が聞こえる。
A「いいのかな、私組にいても、」
霧島「あぁみんな待ってるぜ、お嬢も組長も杉原もんで俺が1番待ってる」
そうして初めてAと向かい合った。
あぁ、良かった。俺でもしっかり伝えられた。
霧島「おかえり」
A「、ッ、た、ただいま」
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作者名：野生の黒豹 | 作成日時：2022年9月16日 7時
