羽ばたけるなら3 (ページ9)

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林間合宿前（3）ページ9

家の近くの公園に着き、いつものベンチに腰掛ける。

ドーナッツの袋を開けると、それぞれ味の異なるドーナッツが3個綺麗に並んでおり、いちご味のドーナッツを取りかけて手を引っ込める。

「欲張って3個も買ってしまった…。最初はチョコからいくか…好きないちご味は最後に食べよう」

ニマニマしながら手に持っているドーナッツを見る。

かぶりつこうとした瞬間、急に目の前が暗くなった。

「おい、こんな所でニヤニヤしながらドーナッツ見てんじゃねぇ。不審者にしか見えねぇよヘラ女。きめぇ」

あ、爆豪…。
そして、急な悪口。

かぶりつく瞬間を見られて少し恥ずかしくなった私は
「買いすぎたから1個食べる？」
そう言って、新しく紙で上手く包んだドーナッツを彼の前に差し出す。

「甘ぇのはいらねえ」
突き返された。

「まぁ、そっか…。辛いもの大好き人間とは相反するものだったね。ごめん、配慮が足りなかった」

「何言ってんだ？アホか」

私にそう言いながら、彼はどかっと横に座った。

「で、どうしたの？見るからにランニング途中だと思われますが」

「何でもねぇよ」

「左様ですか」

私も黙々とドーナッツを食べる。

1個食べ終わり、2個目にいこうとしたら
「おい、ヘラ女」

今まで無言だった爆豪に話しかけられた。
「ん？どうした」

「半分野郎とは付き合ってんのか」
あー。
此間2人で歩いているところ見たから勘違いしたのかな。
喧嘩する前にも、色々あったしなぁ。

まぁ、別に爆豪が気にすることなんてないと思うけど。

「いや、付き合ってない。何で」
「何でもねぇ」

「…左様ですか」

そう言って、再び彼は無言になった。

食べながら横にいる彼をチラ見すると、前の方を見ながら真顔で座っている。

彼は何を考えているのだろうか？
まぁ…、お互い喋らないこの状況でも、気まずくならないのが心地いいんだよね。
そう思っているのは私だけかもしれないけど。