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死にゆく者が見せる顔 ページ29













持っていたナイフをそいつの動脈にプツリと刺す。

プクッと湧き出るのは人間の血の色ではなかった。











『…っ、』












痛いのなら、祓われたくないのなら、
呪霊らしく汚い音を出しながら暴れればいいのに。


そいつは静かに涙を流した。
俺の目を見つめて、白い睫毛を濡らした。
















『……じゃーな』



















________

















『お"ぇっ…く"、…ぅ』









気色が悪い。趣味が悪い。後味が悪い。

目を閉じれば、死んでいく悟の苦しそうな顔が浮かぶ。













たしかに赤い血ではなかった。
紫色の血が揺れる水に溶けていた。


最期の呻き声も呪霊特有のものだった。
悟の声とは似ても似つかない。




それでも、重なってしまった。













止まらない吐き気と、体の震え。

頭がおかしくなりそうだった。
















それからどのくらい経ったのか、
たった2分しか進んでいない時計の針を見て心底驚いた。



『……悟、探さないと…』







込み上げる吐き気と、空っぽの胃袋は
とことん相性が悪い。

痛い程の胃液が食道を這い上がる。














殴り飛ばされた時に破壊した壁を抜けると、
最初にいた廊下に出た。


廊下の窓から空を見上げると、まだ帳は上がっていない。


そりゃそうだ。
さっき俺が倒したのはせいぜい1級呪霊。




たちの悪さはピカイチだったが案外簡単に祓えた。














さて、これからどうしようか。

さっきの呪霊を祓った時点で領域は解除されているから
悟とも合流することが出来るだろう。


でも、きっと今の俺の呪力量では
足手まといにしかならない。








フラフラする足取りでゆっくりと廊下を進みながら考える。


ギ…ギ…と俺の足音に合わせて軋む廊下は薄暗くて
先の方は見えなかった。








頭の中にこべりついた記憶がゆっくりと俺を飲み込んで
暗闇に引きずり込まれるような、

真夜中の海の底で溺れるような、そんな気分だった。



















____その時。



















バシュッと弾けるように窓の外の帳が消えた。

薄暗い廊下を太陽が照らした。



あぁ、悟が特級を祓ったのか…



そう確信しほっとした瞬間、
身体の力がふっと抜けて膝から崩れ落ちた。


















呪い→←生への執着



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nns - めっっっちゃ好きです!!!!!更新お待ちしてます!!!!! (11月3日 22時) (レス) @page30 id: 65c15343ec (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - またの更新楽しみにお待ちしております。 (8月19日 10時) (レス) @page30 id: 75972ecbb8 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - お元気ですか? (7月25日 2時) (レス) id: 75972ecbb8 (このIDを非表示/違反報告)
しま(プロフ) - コメント失礼します!相澤先生の小説からここまで一気読みしてしまいました!夢主くんに対して容赦なさすぎて私の性癖に刺さりまくりで最高でした…!更新、待っていますね!ヽ(゚▽゚︎*)乂(*゚▽゚︎)ノ (5月15日 23時) (レス) @page30 id: 901e45cbed (このIDを非表示/違反報告)
津城瑠生(プロフ) - ぁ、田辺さん好き。八の字に下がる眉頭が俺の住処です。てかこの作品とっても面白いです!!! (2022年11月21日 12時) (レス) @page27 id: 90b7e5739a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おっ腐 | 作成日時:2022年9月1日 22時

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