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悪意 ページ27












悟のおかげ、というのはなんとなく癪だが、
実際にさっきまでの焦りは俺の中から消えていた。



悟の後に続き薄暗い旅館へと入る。










心臓の音がドクドクと耳元で鳴っているのかと思うほど
やけにうるさく感じた。

それ程までに、静かに俺たちを招き入れた。












気味が悪い。

足元からモゾモゾと得体の知れない恐怖が這い上がる。







でも数センチ上を見上げれば、
恐怖などなにもないような清々しい横顔が見えた。

薄暗い旅館の中、目立つ白髪は俺を酷く安心させた。

















『…なぁ悟』



「ん?なに?」



『これ終わったらアイス食いてぇ』



「え、遺言?」



『縁起でもねぇこと言うなバカ』















特級が住み着く旅館だというのに何だか気の抜ける会話をしながらも、俺たちは着実に死へと近づく。



ふと、揺れる白髪から目を逸らす。















旅館だから当たり前だと言われればそれまでだが、
何年も放置されている割には綺麗な館内。

きっとずっと大切にされてきたであろう置物や掛け軸が
ポツンとそこにはあった。








『…なんか、寂しいな……』







口をついて出た小さな声にハッとして、
少し恥ずかしくなり『ははっ、なーんてな!』と誤魔化し頭を掻きながら悟へと目を移す。



















けれどそこにあったのは永遠と続く朽ちた廊下だった。










『………悟?』
















思っていたよりも、か細く震えた声が響いた。














あぁ、俺はつくづくバカだ。

背後に感じる異様なまでの死の気配に、
どこか冷静にそう思った。



















「……オ前も、寂シイ?」
















声が、俺の耳元で鳴る。

瞬間、冷たい生肉のような質感が俺の耳を撫でる。











ヌチュッ…ヌチュ…ヌチュッヌチュッ、…


















動け。動け。



そう思うのに、俺の体は1ミリだって動かなかった。

ただただ呪霊に舐め回されている自分が反射するガラスを見つめるしか出来なかった。










特級だから?…いや違う。



















そいつは遥かに俺より背が高くて、
蒼い目と白い髪をしていたからだ。


聞き慣れた声が「気持チイイ?」と呟く。



















『……なんで、…っ』

















生への執着→←絡みつく呪い



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nns - めっっっちゃ好きです!!!!!更新お待ちしてます!!!!! (11月3日 22時) (レス) @page30 id: 65c15343ec (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - またの更新楽しみにお待ちしております。 (8月19日 10時) (レス) @page30 id: 75972ecbb8 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - お元気ですか? (7月25日 2時) (レス) id: 75972ecbb8 (このIDを非表示/違反報告)
しま(プロフ) - コメント失礼します!相澤先生の小説からここまで一気読みしてしまいました!夢主くんに対して容赦なさすぎて私の性癖に刺さりまくりで最高でした…!更新、待っていますね!ヽ(゚▽゚︎*)乂(*゚▽゚︎)ノ (5月15日 23時) (レス) @page30 id: 901e45cbed (このIDを非表示/違反報告)
津城瑠生(プロフ) - ぁ、田辺さん好き。八の字に下がる眉頭が俺の住処です。てかこの作品とっても面白いです!!! (2022年11月21日 12時) (レス) @page27 id: 90b7e5739a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おっ腐 | 作成日時:2022年9月1日 22時

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