第７９話 ページ37
第７９話
あの後、医者達は無理やり苦笑いをしながら「じゃあまた来るね」と言って出ていった。もう何もする気になれない。
何となく窓に近づいて夜景を眺める。夜の街で疎らに散らばる家の灯りが、私の胸を締め付けた。
あの灯り一つ一つに家族があって…人それぞれの事情を抱えながらそれなりに幸せに暮らしているんだろう。親は子を愛し、子は親に甘え、それなりの愛情を注ぎあう。
ああ…羨ましいなぁ。
私の頬に一粒の涙が流れた。私は人に愛される感覚を知らない。父には興味すら持ってもらえず、母には怯えられ、友人や恋人も出来なかった。私がどれだけ相手に歩み寄ろうと…私を必要としてくれる人は誰もいなかった。
来世は、もっと楽しく暮らせるといいな。特別な事なんて何もなくていい。ただ普通に親と仲良く過ごすことが出来て、普通に友達なんかを作って。
早く、来世に行きたい。
ベッドの横にあった椅子を窓の前に動かし椅子に登ると、窓ガラスを開けてみた。ヒュッ…と涼しくて気持ちいい夜風が私の頬を撫でてくれる。
まるで早くこっちにおいでと言われてるみたいだ。
「……そうだね、すぐ行くよ」
聞こえてもいない声にそう返し、私は窓の淵に足をかける。背後でノック音がした気がして…多分また医者か看護師だろう。
別に、どうでもいいや。
早く向こう側に行かなくちゃ…
「Aっ！！！」
聞きなれた低い声にハッとする。私が振り返るよりも早く、服を引っ張られ病室へと体が引き戻された。嫌だ…私はアッチに行きたいのに。
ドサッと椅子から落ちて倒れ込む私を受け止めながら、部屋に入ってきた人物は私を背後からギュッと抱き締める。
「馬鹿ッ、何やってんだお前…！」
「……焦凍」
姿を見なくたって声で分かる。ああ、なんで私が助けを求める時は誰も来てくれないのに…私が望んで死のうとすると邪魔ばかり入るんだろう。
そう言えば、あの日私が家の中庭で死のうとした時も止めたのは焦凍だったな。本当に、運がいいのか悪いのか。どうしていつもこのタイミングなの？
「…………邪魔しないで」
自分でも驚くほど冷たく低い声が出た。私ってこんなに低い声が出せるんだ。まるで怒った時の焦凍みたいな、威圧感のある声に焦凍の動きが止まった。
そして焦凍は私を離し、私の体を自分の方に向けさせる。今回初めて見る焦凍の顔は、少し悲しそうに歪んでいた。
「俺は、何度でも邪魔するからな」
．
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クロ - 凄く素敵でした✨私は今まで読んできた轟の夢小説の中で、この作品が一番大好きです!次の作品も楽しみにしています! (11月22日 16時) (
レス) @page47 id: 0a0119112e (このIDを非表示/違反報告)
あやぎり(プロフ) - 妙にリアルな感じがめちゃくちゃ好きです…！主様の文もとても惹かれるもので素敵でした！完結おめでとうございます！次の作品も楽しみにしております♡ (5月2日 20時) (レス) @page47 id: d40ddaf348 (このIDを非表示/違反報告)
CLOCHE(プロフ) - 次の作品を楽しみにして待っています…！ (2022年5月14日 21時) (レス) id: 1fbe654695 (このIDを非表示/違反報告)
CLOCHE(プロフ) - 私の中では兄弟恋愛がなかなか受け入れられないものなので普段は見ようとしないし、何なら兄弟恋愛かもって思った時点で見るのをやめようかと思いましたが、この作品はこれでおしまいじゃなくて続きを読んでみたいと思うほど面白かったです。 (2022年5月14日 21時) (レス) @page47 id: 1fbe654695 (このIDを非表示/違反報告)
るう - いぢめてたモブ達への復習ナシは流石に胸糞が残る (2021年9月7日 23時) (レス) id: 63584da8be (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年5月19日 23時
