第５８話 ページ16
第５８話
「焦凍、少しこのまま聞いて欲しい」
頭はスッキリしてる。心も落ち着いてる、だから大丈夫だ。焦凍の硬い胸板に耳を当てると、ドクンッドクンッと少し早い鼓動が聞こえた。きっと驚いてるからだろう。
こうしてみると、血が繋がっててもやっぱり生物として他人なんだなと実感した。
「前に私が言ったこと覚えてる？焦凍に私の気持ちは分からない、私も焦凍の気持ちが分からない。もうそれでいいでしょ……って言ったこと」
「っ……！！」
「あの時、突き放すような事を言ってごめん。ずっと謝ろうと思ってたのに、早く謝らなきゃいけなかったのに……謝るのが遅くなった」
ずっと後悔していた。焦凍の忠告を否定した事じゃなくて、言わなくてもいい事を言ってしまった事を。いじめの事を焦凍に言うつもりは無い。
焦凍は忠告してくれたのに、それを聞かなかったのは私だ。だからアレは私自身の力でどうにかしなきゃいけない。
でも、焦凍に言った言葉だけは…
「後悔して焦凍に合わせる顔がないと思った。許してくれなくてもいい、ずっと嫌われたままでもいい。それでも謝らなきゃって……思ったの」
「っ……なんで、俺はお前に冷たくしてきたのに」
「そりゃ冷たくて横暴な時もあるよ。焦凍と話すのは気まづいし、怖い時もある。でもやっぱり嫌いになんてなれなかった…」
顔を上げ焦凍の顔を見る。焦凍は驚いたように目を見開いていて、その色の違う両目に自分が映っていた。
確かに焦凍の事は今でも怖いし気まづいし、苦手な所ばっかりだ。でも、それでも。
それでも嫌いになれなかったのは…
「私は焦凍のいい所も、知ってるから」
「っ………」
いま、微かに私の頬が緩んだ。
こんなの笑った内になんて入らない。本当に微妙な、しかも苦笑いだ。それでも焦凍に向かってこんな顔をしたのは…きっと数年ぶり。
そうだ、私は焦凍のいい所を知ってる。
どれだけ冷たくても、焦凍は絶対に悪い人にはならないんだ。ちゃんと正義感を持っていて、それを貫ける強く純粋な心の持ち主。
緑谷くんと同じ、ヒーローの心を持ってる。
「だから、焦凍は……そっちに行かないで」
「……A」
「また幾らでも私のこと馬鹿にしていいから、幾らでも冷たくしていいから……私も絶対逃げないから」
もう一度、すがりつくように焦凍の胸元へ顔を埋めギュッと抱き締める。
「お願い、戻ってきて……焦凍」
．
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クロ - 凄く素敵でした✨私は今まで読んできた轟の夢小説の中で、この作品が一番大好きです!次の作品も楽しみにしています! (11月22日 16時) (
レス) @page47 id: 0a0119112e (このIDを非表示/違反報告)
あやぎり(プロフ) - 妙にリアルな感じがめちゃくちゃ好きです…！主様の文もとても惹かれるもので素敵でした！完結おめでとうございます！次の作品も楽しみにしております♡ (2023年5月2日 20時) (レス) @page47 id: d40ddaf348 (このIDを非表示/違反報告)
CLOCHE(プロフ) - 次の作品を楽しみにして待っています…！ (2022年5月14日 21時) (レス) id: 1fbe654695 (このIDを非表示/違反報告)
CLOCHE(プロフ) - 私の中では兄弟恋愛がなかなか受け入れられないものなので普段は見ようとしないし、何なら兄弟恋愛かもって思った時点で見るのをやめようかと思いましたが、この作品はこれでおしまいじゃなくて続きを読んでみたいと思うほど面白かったです。 (2022年5月14日 21時) (レス) @page47 id: 1fbe654695 (このIDを非表示/違反報告)
るう - いぢめてたモブ達への復習ナシは流石に胸糞が残る (2021年9月7日 23時) (レス) id: 63584da8be (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年5月19日 23時
