第７７話 ページ35
第７７話
カチッと俺の中で何かが合わさる音がした。まるで難解なパズルで最後のピースが合わさったみたいに。
嫉妬とは、自分にも同じ事をして欲しいという欲求のこと。羨ましいと思うこと。
もしAに好きな奴が出来てそれにイラつくのは相手に嫉妬しているから。嫉妬…つまり、Aに好かれる相手を羨ましいと…自分の事も好いて欲しいと思ってるから……って事なのか？
俺の顔から血の気がサァーっと引いていく。
「俺はまさか、Aに……惚れてるのか？」
「えっと…一概にそうとは言えないかもしれないけど、正直傍から見たらそうとしか見えない…かな」
「……………………そう、なのか」
顔を真っ青にして視線を落とす俺に「いやほらっ、普通に兄妹愛かもしれないし！愛の重さは人それぞれだから分からないけどっ」と緑谷が慌てる。
いや、でも…考えれば考えるほど俺もそうとしか思えなくなってきた。今までの自分の変な感情に、辻褄が合っていく。
血の繋がった実の妹に、俺は…。
「………緑谷、悪ぃ、俺…今日はもう」
「えっ…あ、うん！そうだね！！」
頭がパニックになり過ぎてフラフラとしながら緑谷と会計を済まし、ファミレスから出て俺は「今日は付き合わせて悪かった…」と緑谷に背を向ける。
……あれ、さっきの会計って幾らだった？今日は何曜日だ？午後の授業は何だった？
頭が回らなくなり呆然としながら歩いていると「轟くん…！」と緑谷の声がして振り返る。夕日のせいでオレンジ色に染まる景色と、緑谷の少し真剣な顔。
「………緑谷？」
「この短時間で色んな事が一気に分かって困惑するのは分かるけど、今はしっかりしてなきゃダメだよ！やらなきゃいけない事があるだろ！？」
だから、と緑谷は少し微笑んだ。
「一番大切な気持ち、忘れないでね」
一番大切な、気持ち。
ふと…あの晩に雨を浴びながら中庭で死のうとしていたAを思います。光のない虚ろな瞳、この間アイツの見舞いに行った時も同じだった。
俺は、Aにあんな顔をして欲しくない。大切な奴だと気付いたからこそ余計に、俺はAを救わなきゃいけない。
やらなきゃいけねぇ事。
一番大切な気持ち。
Aの笑顔を、また見たい。
「………ああ、そうだな」
俺が、しっかりしねぇと。
愛する事を知らない俺と
愛される事を知らない妹
先にそれらを知ったのは
……俺だった。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1765人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
クロ - 凄く素敵でした✨私は今まで読んできた轟の夢小説の中で、この作品が一番大好きです!次の作品も楽しみにしています! (11月22日 16時) (
レス) @page47 id: 0a0119112e (このIDを非表示/違反報告)
あやぎり(プロフ) - 妙にリアルな感じがめちゃくちゃ好きです…！主様の文もとても惹かれるもので素敵でした！完結おめでとうございます！次の作品も楽しみにしております♡ (2023年5月2日 20時) (レス) @page47 id: d40ddaf348 (このIDを非表示/違反報告)
CLOCHE(プロフ) - 次の作品を楽しみにして待っています…！ (2022年5月14日 21時) (レス) id: 1fbe654695 (このIDを非表示/違反報告)
CLOCHE(プロフ) - 私の中では兄弟恋愛がなかなか受け入れられないものなので普段は見ようとしないし、何なら兄弟恋愛かもって思った時点で見るのをやめようかと思いましたが、この作品はこれでおしまいじゃなくて続きを読んでみたいと思うほど面白かったです。 (2022年5月14日 21時) (レス) @page47 id: 1fbe654695 (このIDを非表示/違反報告)
るう - いぢめてたモブ達への復習ナシは流石に胸糞が残る (2021年9月7日 23時) (レス) id: 63584da8be (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年5月19日 23時
