第５話 ページ7
第５話
夜になり私は重い足取りで中庭に向かう。案の定、焦凍は中庭でトレーニングをしていた。昨日みたいなハプニング以外で、私と焦凍は会話をしない。
声をかけるの嫌だなぁ…。
「……焦凍」
私が恐る恐る声をかけると、焦凍はピタリと止まってゆっくり私の方を振り向く。相変わらず冷たい無表情で、本当の家族とは思えない視線を送られる。
バレないように小さく溜息を吐き、焦凍の方へ歩み寄った。
「あの、これ……クラスの女子が焦凍にって」
私が預かった手紙を差し出すと、焦凍は無言で受け取る。これでいつもは背を向け別れるんだけど、今回はまだ他にもあるんだった。
「それから、連絡先教えて欲しいって」
「……………」
「私は焦凍の連絡先知らないし、その子に焦凍から直接教えに行ってあげれば喜ぶと思う。可愛い子だったし、焦凍も気に入ると思うから」
「……そういうのやめろって言っただろ」
冷たい声に思わず身が竦む。
「手紙はありがたく受け取るけど、連絡先聞きたいなら俺に直接聞きに来ればいい。わざわざお前を通すのは、なんか違ぇだろ」
「………そんなこと、私に言われたって」
「お前もお前だ。友達が居ねぇからって、俺に対する周りの気持ちを利用して余計なお節介までやいて、人助けして満足感でも得てるのか？そういうの周り奴にも失礼だろ」
「違っ……なんでそうなるの！」
確かに余計なお節介かもしれない。いくら女の子にアピっといて、と言われたからって言わなくていい事を言ったかもしれない。
でも、そういう事を利用して友達作ろうとか人助けして自己満足してるわけじゃないよ。
「っ……私のこと何も分かってない癖に」
「図星だからって俺に当たるな」
「違うって言ってるでしょ！」
思わず私がビンタをしようとすると、焦凍に軽々と片手で止められる。振り払おうとしてもビクともしなくて、私はそのままうつ伏せで地面に押さえつけられた。
私の片腕を背中に回して締め上げられ、僅かに口の中に入った土がジャリジャリとする。
「俺に喧嘩で勝てるわけねぇだろ」
「っ…………」
「こんなに弱くてヒーローになれるわけねぇ。お前がヒーローを目指しても、クソ親父は構ってくれねぇことぐらい自分でも気づいてんだろ」
「……離してっ」
「お前は分かってねぇんだ」
分かってないのは焦凍だよ。
私は、お父さんに構って欲しくてヒーローになりたいんじゃない。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1390人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
冬桜 - 読んでて自分まで胸がｷﾞｭｯてなったりしてすごく面白かった？です！！ (2021年8月6日 23時) (
レス) id: 4ef8003614 (このIDを非表示/違反報告)
黒目。(プロフ) - 小説も絵もめっちゃ好きです！！ (2020年4月17日 1時) (レス) id: 5a29d39680 (このIDを非表示/違反報告)
ひまり(プロフ) - ごめんなさい！随分前の作品みたいですけどスッゴく大好きになりました！このまま読み進めようと思います！挿し絵も大好きです！ (2019年8月15日 18時) (レス) id: a4cdcf90f4 (このIDを非表示/違反報告)
瑠斗 - とどろっちゃん！！！！好きだぁ！ (2018年11月11日 22時) (レス) id: 223f7ad38f (このIDを非表示/違反報告)
いう - 頑張ってください。 (2018年11月11日 22時) (レス) id: 170f7a55c4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年5月14日 17時
