第３７話 ページ39
第３７話
待ちに待った、特別な日。
どこから送られてきたのかも分からない花束や、紅白色の布が飾られた校舎。３月中旬、今日は中学校の卒業式。
チラホラと桜の蕾が開き始めていて、きっともうすぐ満開になるんだろうな…と思いながら校舎に入り教室へ向かった。卒業式という事もあって3年生だけじゃなく、他の学年もザワついてる。
私にとっては別に特別感がない。居なくなって寂しくなるような先輩もいないし、もうすぐ自分が3年生になるというワクワク感もなかった。
寧ろ、女子達から焦凍への手紙とかプレゼントとか…そういう面倒事をする必要がなくなると思うと少し安心してる。人の役に立つのは嬉しいけど、それよりも焦凍が怖いから。
ふぅ…とよく分からない安堵の溜息を吐いて席に座ると「轟さん…！」と声をかけられる。
またあの二人組かな、と思い顔を上げた先には数人の女子が私を囲っていた。な、なんだろう怖い。
「えっと…私になにか？」
「お願いしたいことあるんだけど！」
「………まさか」
「卒業式が終わったらお兄さんを呼び出して！」
また、これか。
嫌な予感しかしなかったけど、やっぱり。
「……あの、私」
「綾瀬さん本気なのよ！」
「綾瀬さん…？」
ふと、女子達の中心にいる綾瀬さんを見る。綾瀬さんは顔をほんのり赤くしてモジモジとしながら「ちょっと、恥ずかしいから皆そんな大きな声で言わないでよ〜」と照れ笑いをした。
綾瀬さんはクラスの中心的な人物で、いつもニコニコしてるフワッとした可愛らしい女の子。女の私から見ても本当に可愛いと思う。それくらいモテる生徒で、男女問わず人気がある。
……でも。
『次、同じことしたら怒るからな』
前に言われた焦凍の言葉を思い出す。私は焦凍と約束した。流石に怒られると分かってて受けられない。
「ごめん、私は…」
「今日って卒業式じゃん？最後なんだよ、綾瀬さんの気持ち分かってあげなよ轟さん」
「っ………」
そう、だけど…。
綾瀬さんを見れば本気だって事は伝わる、今日が最後のチャンスなんだって事も分かってる。でも焦凍との約束があるんだ。
「……手紙で呼び出せば、焦凍は来ると思うよ？」
「手紙なら下駄箱に入れようとしたけど、なんか同じようなのがいっぱい入ってたのよ！だから他の女に横取りされちゃ困るから、妹の轟さんが呼んだ方が確実でしょ！？」
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1389人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
冬桜 - 読んでて自分まで胸がｷﾞｭｯてなったりしてすごく面白かった？です！！ (2021年8月6日 23時) (
レス) id: 4ef8003614 (このIDを非表示/違反報告)
黒目。(プロフ) - 小説も絵もめっちゃ好きです！！ (2020年4月17日 1時) (レス) id: 5a29d39680 (このIDを非表示/違反報告)
ひまり(プロフ) - ごめんなさい！随分前の作品みたいですけどスッゴく大好きになりました！このまま読み進めようと思います！挿し絵も大好きです！ (2019年8月15日 18時) (レス) id: a4cdcf90f4 (このIDを非表示/違反報告)
瑠斗 - とどろっちゃん！！！！好きだぁ！ (2018年11月11日 22時) (レス) id: 223f7ad38f (このIDを非表示/違反報告)
いう - 頑張ってください。 (2018年11月11日 22時) (レス) id: 170f7a55c4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年5月14日 17時
