第３４話 ページ36
第３４話
「お前のせいでもあるだろ！」
焦凍の珍しく張った声は、どことなく余裕がない。お互い叫んだからか焦凍と私の少し荒い息が聞こえる。気がつけば夕日は落ちていて、部屋が薄暗くなっていた。
焦凍の気持ちが分からない。なんでそんなに怒っているのか、なんで私ばかりに突っかかるのか。
なんで、家族でこんなっ…。悔しいからか、悲しいからか、よく分からない涙が出る。
「もう離してっ…」
「泣けば俺が引くと思ってるのか」
「分からないよ、焦凍に私の気持ちなんて…」
「お前も俺の気持ち分かんねぇだろ」
分からないよ、全然理解できない。
「……焦凍は、私にどうして欲しいの」
「っ……俺は」
焦凍が何かを言いかけてやめる。いや、自分でも分からいと言った表情で顔を歪めた。焦凍に分からないなら私にも分からないよ。
分かるわけないじゃん。
「昔から、お前を見てるとイライラする」
「……なにそれ、改めて嫌い宣言？」
「っ…そういう俺に対する変な態度も、全部」
変な態度ってなに、焦凍だって私にだけ変でしょ。冬美姉さんや他の人には普通なくせに、私とお父さんにだけ冷たいじゃん。
それを私だけのせいだって言いたいの？
「結局焦凍は、自分だけが正しいと思ってる」
「黙れ…」
「充分、エゴイストだよ」
「もう喋るな」
「他人の気持ちなんか考えた事もないくせに、自分のことばっかり。そのくせ私にどうして欲しいのかとか、自分の気持ちも分かってない。なのに自分の考えを力づくで私に押しつけて…」
「っ……」
「それ、ちょっと卑怯だよ」
焦凍が私の胸倉を掴む。その手は少し震えていて、歯を食いしばっていた。悲しみにも似た怒った表情は歪んで見える。
なんでだろう、私は酷く落ち着いてきた。
「殴りたいなら殴ればいい」
「っ……お前」
「そんなやり方でしかスッキリしないなら、焦凍はお父さんと同じだ」
私の言葉に焦凍はまたグッと歯を食いしばると、数秒黙り込んでゆっくり私の胸倉を離す。冷静さを取り戻したのか、私を見下ろす焦凍の目が少し寂しそうにも見えた。
焦凍は私の上から退き、私の腕を引っ張って体を起こしてくれる。
「……悪ぃ、苦しかったか」
「………大丈夫」
この時の私も、焦凍も
まだ自分達の気持ちがすれ違ってることに
気づけなかった。
だから衝突してしまう。
それくらい
お互い心に余裕がなかったのだ。
．
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冬桜 - 読んでて自分まで胸がｷﾞｭｯてなったりしてすごく面白かった？です！！ (2021年8月6日 23時) (
レス) id: 4ef8003614 (このIDを非表示/違反報告)
黒目。(プロフ) - 小説も絵もめっちゃ好きです！！ (2020年4月17日 1時) (レス) id: 5a29d39680 (このIDを非表示/違反報告)
ひまり(プロフ) - ごめんなさい！随分前の作品みたいですけどスッゴく大好きになりました！このまま読み進めようと思います！挿し絵も大好きです！ (2019年8月15日 18時) (レス) id: a4cdcf90f4 (このIDを非表示/違反報告)
瑠斗 - とどろっちゃん！！！！好きだぁ！ (2018年11月11日 22時) (レス) id: 223f7ad38f (このIDを非表示/違反報告)
いう - 頑張ってください。 (2018年11月11日 22時) (レス) id: 170f7a55c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年5月14日 17時
