第２９話 ページ31
第２９話
３月になり、私達学生にとっては色んな節目の季節となった。もうすぐ卒業式があるからか学校側も少し落ち着きがなくなってくる。
焦凍は高校を卒業後、雄英高校に行くらしい。やっぱり焦凍は本気でヒーローになるつもりなんだ。そして本気で、左側を使わないつもりなんだろう。
そこに関して私が口出し出来る立場でもないけど、昔は焦凍も純粋にヒーローに憧れてた。なのにいつの間にか、そんな気持ちも忘れてしまったのかな。
忘れて…いて欲しくないな。
だって焦凍は、私とは違う。
「じゃあ今日の日直は日誌と、それから進路調査の用紙回収よろしくな〜」
先生の声にハッとする。今日の日直って私か、なんでこんな面倒臭いタイミングで私なんだ。
放課後のホームルームが終わり先生は教室を出ていく。クラスの子たちが進路調査の用紙を教卓に置いてぞろぞろと帰っていく中、私は小さく溜息を吐いた。
そういえば日誌が私の手元にない。昨日の日直の子がまだ持ってるのかな、確か昨日の日直って綾瀬さん…だった。
そっと綾瀬さんの方を見ると、彼女の机の中に日誌があるのが見える。早く取りに行きたいけど、話しかけるのに勇気が出ない。綾瀬さんは他の子と楽しそうに話してるし…きっと私に渡すの忘れてるな。
こうなれば綾瀬さん達が帰るのを待って、取りに行くしかないか。こんな時に自分の臆病さが鬱陶しくなる。
「……めんどくさいなぁ、もう…」
誰にも聞こえないようにそう呟き机に顔を伏せた。
数十分後、クラスの皆が帰ったのを確認して立ち上がると、教卓に集められた進路用紙の束を手に取る。早く職員室に持って行こう。
ちゃんと人数分あるか確認し、職員室に持って行って担任の先生に手渡した。先生は「確かに受け取った、お前も早く帰れよ」なんて他人事のように言う。
先生が面倒事を押し付けたんじゃないか。まあ別にいいけど…。
誰もいなくなった教室にもどり、綾瀬さんの席から日誌を取り自分の席に戻る。教室に差し込むオレンジ色の夕日と、どこからともなく聞こえる野球部の声。
こんな時間まで学校に残るのは久々だ。
「………A？」
「え…あれ、焦凍？」
．
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冬桜 - 読んでて自分まで胸がｷﾞｭｯてなったりしてすごく面白かった？です！！ (2021年8月6日 23時) (
レス) id: 4ef8003614 (このIDを非表示/違反報告)
黒目。(プロフ) - 小説も絵もめっちゃ好きです！！ (2020年4月17日 1時) (レス) id: 5a29d39680 (このIDを非表示/違反報告)
ひまり(プロフ) - ごめんなさい！随分前の作品みたいですけどスッゴく大好きになりました！このまま読み進めようと思います！挿し絵も大好きです！ (2019年8月15日 18時) (レス) id: a4cdcf90f4 (このIDを非表示/違反報告)
瑠斗 - とどろっちゃん！！！！好きだぁ！ (2018年11月11日 22時) (レス) id: 223f7ad38f (このIDを非表示/違反報告)
いう - 頑張ってください。 (2018年11月11日 22時) (レス) id: 170f7a55c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年5月14日 17時
