第２１話 ページ23
第２１話
「くそっ…！」
俺は自分の部屋に戻り、さっきAから奪った財布を床に叩きつけようと腕を振りかざしてグッと思いとどまる。何してんだ俺は、物に当たるのは違ぇだろ。
Aの財布をテーブルに置き、行きどころのない怒りをどうにかしたくてまたイライラが募る。
チョコを買いに行くと言ったAが誰に渡すつもりだったのか。最初はそれが何故か気になって、相手が親父だと言われムカついた。
また、クソ親父かよ…。構ってくれねぇって分かってるんだろ、それなのに何でまだ親父なんだ。
『焦凍の方がお父さんに似てるじゃん』
心底ムカつくのに、否定できなかった。否定したいのに否定出来ないのがイラついて、余計に力任せの黙らせ方しか思い浮かばない。
「……………はぁ」
いつから俺達はこうなったんだろうか。思い出そうとしても、明確な事はもう思い出せない。俺の個性が発覚する前は普通の兄妹だった…と思う。それすらも鮮明には思い出せなかった。
ただ、個性が発覚しクソ親父の俺を見る目が変わったあの頃。唯一の拠り所であった母が俺に煮え湯を浴びせ病院に入れられたと知り、俺は身も心もボロボロになった。
毎日のように繰り返される親父のスパルタ教育。母に甘える事も叶わず、親父への憎しみだけが募っていく日々。
そんな中、Aはずっと俺の側にいた。歳が近いとはいえ唯一の妹、可愛くなかった訳じゃない。身も心もボロボロだった幼い俺にとって、俺に笑いかけてくれる妹のAが癒しだった。
けど…親父への憎しみが募っていけばいくほど、親父にベッタリなAを見るとイライラするようになった。俺にとって唯一の癒し、なのにお前は親父の元へ行くのか。
そんな気持ちが膨らみ、次第にAを見るのが嫌になった。Aを見るとイライラして、自分が惨めな気持ちになる。それが嫌で少しずつAに対して冷たくなっていった。
Aも俺からドンドン離れていき、今じゃもう俺に笑ってもくれない。そんなAの全てにイライラするようになって、俺はAが嫌いになったんだと結論づけた。
なのに…
「………分かんねぇ」
なんで俺はいちいちAに突っかかるのか。嫌いなら放っておけばいいのに、体が勝手に動く。口が勝手に動いてしまう。
俺は、Aに何を求めてんだ…？
いつの間にか出来たこのモヤモヤは
どうやったらスッキリするのか
……全然、分からねぇ。
．
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冬桜 - 読んでて自分まで胸がｷﾞｭｯてなったりしてすごく面白かった？です！！ (2021年8月6日 23時) (
レス) id: 4ef8003614 (このIDを非表示/違反報告)
黒目。(プロフ) - 小説も絵もめっちゃ好きです！！ (2020年4月17日 1時) (レス) id: 5a29d39680 (このIDを非表示/違反報告)
ひまり(プロフ) - ごめんなさい！随分前の作品みたいですけどスッゴく大好きになりました！このまま読み進めようと思います！挿し絵も大好きです！ (2019年8月15日 18時) (レス) id: a4cdcf90f4 (このIDを非表示/違反報告)
瑠斗 - とどろっちゃん！！！！好きだぁ！ (2018年11月11日 22時) (レス) id: 223f7ad38f (このIDを非表示/違反報告)
いう - 頑張ってください。 (2018年11月11日 22時) (レス) id: 170f7a55c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年5月14日 17時
