第１８話 ページ20
第１８話
また、この季節がやってきた。
「轟さん、これお兄さんに渡しといて！」
「私のもお願い〜」
「………うん」
女の子達から手渡される大量のお菓子。去年よりも少し多い気がする。仕方ないか、焦凍は今年３年生だから皆渡せるの最後だしね。
今日は2月14日、バレンタインデー。
今年も焦凍に直接渡せない女の子達が、私から渡してくれとそれぞれお菓子を渡してくる。渡すくらいなら焦凍も怒らないし、別にいいんだけど。
やっぱり世間の女の子はこの日に色んな思いをかけてるんだ。私はやった事がないから分からないけど、色々大変なんだろうな。
「……はぁ」
あっという間に放課後になり、鞄にぎゅぎゅうに詰められたお菓子達を見て溜息が零れる。「よいしょ…」と朝よりも数倍重くなった鞄を持ち玄関へ向かった。
通り過ぎる生徒達が「渡辺くんに渡せた？」「俺今年もチョコ貰えなかった〜」「本命って貰ったやついる？」なんて楽しそうに騒いでいる。
実際楽しいイベントなんだろうけど、私は焦凍専用配達係みたいになってるから楽しくはない。
家に帰り鞄の中にぎっしり詰め込んでいたお菓子達を、別の紙袋に入れ替えておく。これでいつでも焦凍に渡せる。
いや、いっそ焦凍の部屋にでも置いとこうかな。
「……うん、そうしよう」
焦凍が帰ってくる前にそうしておこうと、紙袋を持って少し早足で焦凍の部屋に向かう。そっと焦凍の部屋に入りテーブルの上に紙袋を置こうとしたが、手がピタリと止まった。
『雄英高校推薦入試のご案内』テーブルの上に置かれた一枚の封筒。そっか、今週末に推薦入試があるんだっけな。
焦凍は本気で、ヒーローになるつもりなんだ。本気でトップヒーローになってお父さんの事を…。
「おい、何してんだ」
「ひゃい…！？」
ボーッとしていたら低い声が聞こえ思わず変な声を出してしまった。さっさと出ていけばよかったものを、封筒を見ながらボーッとしてたから。
私は恐る恐る振り向き、この部屋の主である焦凍の方を見る。見た感じだと怒ってはなさそう…だけど、相変わらず冷たい視線。
「これ、焦凍にって…」と言いながら持っていた紙袋を渡すと、焦凍は無言で受け取りながら眉間にシワを寄せる。
「………お前、また」
「今回は渡すだけだから」
「……………」
「それ以上、何もするつもりない」
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1390人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
冬桜 - 読んでて自分まで胸がｷﾞｭｯてなったりしてすごく面白かった？です！！ (2021年8月6日 23時) (
レス) id: 4ef8003614 (このIDを非表示/違反報告)
黒目。(プロフ) - 小説も絵もめっちゃ好きです！！ (2020年4月17日 1時) (レス) id: 5a29d39680 (このIDを非表示/違反報告)
ひまり(プロフ) - ごめんなさい！随分前の作品みたいですけどスッゴく大好きになりました！このまま読み進めようと思います！挿し絵も大好きです！ (2019年8月15日 18時) (レス) id: a4cdcf90f4 (このIDを非表示/違反報告)
瑠斗 - とどろっちゃん！！！！好きだぁ！ (2018年11月11日 22時) (レス) id: 223f7ad38f (このIDを非表示/違反報告)
いう - 頑張ってください。 (2018年11月11日 22時) (レス) id: 170f7a55c4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年5月14日 17時
