第９話 ページ11
第９話
「A、何してるの？」
晩ご飯を食べ終えキッチンに立ってレシピと睨めっこしている私に、冬美姉さんが声をかけてくる。
「クッキーでも作ろうかと思って…」
「へぇ〜、女の子らしくていいね！もしかして誰かにあげたりするの？」
「う、うん…上手く出来たらそうするつもり」
「まさか男の子！？」
「へぁっ…え、それは、そのっ！」
言い当てられてしまい慌てる私に、冬美姉さんはニヤニヤとしながら私に歩み寄った。
「もしかして、好きな人？」
「ち、違うよ……ちょっと前に声をかけられて」
「ハッ…告白されたとか！？」
ボンッと音を立て顔を赤くする私を他所に冬美姉さんは「キャ〜、青春ね！」とはしゃぐ。
するとその時、キッチンにまたもう一人やって来た。私と冬美姉さんが振り向くと、そこに居たのは焦凍で…相変わらず無表情。
冬美姉さんが「どうしたの？」と聞くと「喉乾いたからお茶飲みたくて、コップ取りに来ただけ」と普通に答える。冬美姉さんには特に冷たい態度を取ったりしない。
「聞いてよ焦凍、Aがね…告白されたんだって」
「ちょ、冬美姉さん…！」
冬美姉さんの言葉に焦凍は一瞬止まったように見えたが、また直ぐに動きコップを手に取る。そして「…そうか」と言って出ていった。
そりゃ、焦凍は私の事なんて興味ないから当たり前の反応だよね。寧ろ反応されても困る、今更そんな恋バナみたいなこと焦凍と出来るわけない。
「で、返事はしたの？」
「冬美姉さんこの話まだ聞くの…？」
「当たり前じゃない、Aの恋バナなんて初めてなんだから！」
「……じゃあ話す代わりにクッキーの作り方教えてくれる？」
「勿論いいわよ、そのくらい！」
こういう話を誰かとするのは何か恥ずかしいけど、少し楽しいとも思えた。冬美姉さんもニコニコしながら聞いてくれて、同時にクッキーの作り方を教えてくれる。
何だか、こうしていると忘れてしまう。
お父さんやお母さん、個性のこと。焦凍のこと。そしてヒーローを目指していること。そんな事は全部関係なく……一人の女の子として、普通の生活を送っている気分になれた。
普通に学校へ行き、普通に気になる男の子がいて、普通にその人への手作りクッキーなんかを作ってみて、普通にそれを姉と話して。
まどろっこしい家族関係も、自分の中にあるヒーローへの不純な思いも…忘れられる時間だった。
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冬桜 - 読んでて自分まで胸がｷﾞｭｯてなったりしてすごく面白かった？です！！ (2021年8月6日 23時) (
レス) id: 4ef8003614 (このIDを非表示/違反報告)
黒目。(プロフ) - 小説も絵もめっちゃ好きです！！ (2020年4月17日 1時) (レス) id: 5a29d39680 (このIDを非表示/違反報告)
ひまり(プロフ) - ごめんなさい！随分前の作品みたいですけどスッゴく大好きになりました！このまま読み進めようと思います！挿し絵も大好きです！ (2019年8月15日 18時) (レス) id: a4cdcf90f4 (このIDを非表示/違反報告)
瑠斗 - とどろっちゃん！！！！好きだぁ！ (2018年11月11日 22時) (レス) id: 223f7ad38f (このIDを非表示/違反報告)
いう - 頑張ってください。 (2018年11月11日 22時) (レス) id: 170f7a55c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年5月14日 17時
