第２１話 ページ24
第２１話
「………ごめん、なさい」
私が俯きながら震える声で謝ると、焦凍さんは呆れたように微笑み私の頭を撫でた。やっぱりその手は暖かくて、優しくて…心地いい。
私は彼に失望されただろうか。彼の気持ちを踏みにじるような事を言ってしまって、傷つけたりしたのかな。
「今までお前がいた境遇を考えれば、お前が死にたいって思うようになるのも仕方ねぇのかもしれねぇ。でも、お前の環境は変わった」
「っ……」
「だからいつまでも昔の境遇に囚われたままじゃなく、今の境遇にも目を向けて欲しい」
焦凍さんがそっと私の頬を両手で包み、俯く私の顔を上げさせた。まるで、俺を見ろと言わんばかりに。
そして私を安心させるようにフッと微笑む。
「お前の幸せをちゃんと願ってる家族が居るってことを……俺がいるってことを、分かってくれ」
その言葉に、私の胸と目尻がじんわりと熱くなり泣きそうになった。やっぱり私は恵まれている。
彼にここまで言ってもらえて、それでもまだ悲しんでくれる人なんか居ないなんて…無責任なこと言えるだろうか。否、言えるわけがない。
「っ、焦凍さん……わ、私」
「…………」
「すみませんっ…あなたを、傷つけてしまって」
「もうそれは気にしなくていい。でも、次同じ事言ったら怒るかもな。だからお前が死にたいなんて思えなくなるくらい……楽しい日々になるよう、俺も努力する」
焦凍さん言葉に私はまた首を横に振った。
彼が努力する必死なんてない。だって、その言葉で充分なのだから。充分…意味のある時間をこの人は私にくれている。
だから私も、彼の思いに…期待に、応えなくちゃいけない。私は焦凍さんの期待に応えたい。
「私、ちゃんと努力します…」
「お前も頑張ってくれるのか？」
「……あなたの期待に、応えたいから」
そう言うと焦凍さんが少し目を見開き、また薄らと微笑んだ。
「そうか…ありがとな」
「え、あの…お礼を言うのは私の方です」
「……嬉しかったから、言わせてくれ」
この人と暮らし始めて
まだたった２ヶ月なのに
毎日が濃くて、暖かい。
そんな私の気持ちと共に
梅雨が終わり、季節は夏へと動き出す。
．
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なんだよたけしビビってんのか(プロフ) - 全作品絵が本当に美しくて初めて絵で感動しました。また伏線が所々あってその上感動するなんて天才... (2021年5月23日 2時) (
レス) id: dfdea40777 (このIDを非表示/違反報告)
あすか(プロフ) - タイトルの絵もなんかアニメ「ＰＳＹＣＨＯ-PATH」に絵柄が似てて感動。しかも、物語にもなんか感動した。 (2019年9月14日 0時) (レス) id: 2712192e09 (このIDを非表示/違反報告)
るみ - 終わり方最高です……！泣いた (2019年4月13日 21時) (レス) id: 4ab93c79dc (このIDを非表示/違反報告)
ﾌｧｱｱｱｱ(プロフ) - 絵がちょくちょく入ってくることによりなんか映画のワンシーンでも見ている気になりますね (2018年9月8日 15時) (レス) id: 01f6b2b9ab (このIDを非表示/違反報告)
トミ - すごく吸い込まれるようなお話で…次を読むのが楽しいです。 (2018年6月30日 23時) (レス) id: 3237980cf6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年5月29日 17時
