第２９話 ページ32
第２９話
「悪ぃな、助かった」
「いえ…お仕事頑張ってください」
そう言ってAちゃんが小さく頭を下げて去っていくのを、僕…緑谷出久と轟くんは見送る。彼女は去り際に僕の方を向いて「緑谷さんも、頑張ってください」と薄ら微笑んでいた。
何ていうか、前よりもよく笑うようになったな。これも轟くんが頑張っているからだ。
７月もあと少しで終わる頃、僕と轟くんは偶々これから一緒に仕事をする。街のイベントにゲスト出演として呼ばれて少し挨拶をするだけなんだけど、轟くんがヒーロースーツを家に忘れてしまったからAちゃんが届けに来たのだ。
「本当にいい子だね、Aちゃん」
「ああ…俺もそう思う」
もう離れて小さくなってしまったAちゃんの背中をまだ見つめる轟くんが、何か思い出しているのか嬉しそうに微笑む。
「何かいい事でもあったの？」と僕が聞くと轟くんがピクッと反応し僕に目を向けた。
「いや……この前、あいつの方から初めて俺の事を家族だって言ってくれて、手を握ってくれた」
そんな事があったんだ。
いつも轟くんはAちゃんに自分達は家族だって言ってるらしいけど、Aちゃんの方から言って貰えたのは初めてなんだろう。
２人の距離が着実に縮まっていくのがよく分かる。なんだか僕まで嬉しくなって「よかったね！」と言うと轟くんはまた嬉しそうに微笑んだ。
「ちょい轟！今の子なに！？」
「あ……上鳴くん」
駆け寄ってきたのは上鳴くんで、彼も僕らと一緒にイベントのゲスト出演で呼ばれていた。
驚いた表情で轟くん詰め寄ると轟くんは「Aのことか？ちょっと引き取ってるだけで…」と顔色ひとつ変えずに答える。
「引き取ってるって…あの子いくつよ」
「今は高３だな」
「高３！？いいのかソレ、絵面的に！！」
何のことだ、と首を傾げる轟くんに上鳴くんは「女子高生とひとつ屋根の下とかやべぇだろ！！」とよく分からないことを言う。
「高３って事は歳も３つしか違わねぇし、なんかこう…変な感じにならねぇのか！？」
「……そう言われれば確かに、歳は３つしか違わねぇのか。普通に子供として見てたから気にしてなかった」
「いやいや高３はもう子供じゃねぇだろ。あと１年もすれば大人の仲間入りだし…女として見たりしねぇの？だってもう同棲みたいだろ、お前ら」
上鳴くんの言葉に轟くんが少し目を見開いたように見えたのは、僕の気のせいだろうか。
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なんだよたけしビビってんのか(プロフ) - 全作品絵が本当に美しくて初めて絵で感動しました。また伏線が所々あってその上感動するなんて天才... (2021年5月23日 2時) (
レス) id: dfdea40777 (このIDを非表示/違反報告)
あすか(プロフ) - タイトルの絵もなんかアニメ「ＰＳＹＣＨＯ-PATH」に絵柄が似てて感動。しかも、物語にもなんか感動した。 (2019年9月14日 0時) (レス) id: 2712192e09 (このIDを非表示/違反報告)
るみ - 終わり方最高です……！泣いた (2019年4月13日 21時) (レス) id: 4ab93c79dc (このIDを非表示/違反報告)
ﾌｧｱｱｱｱ(プロフ) - 絵がちょくちょく入ってくることによりなんか映画のワンシーンでも見ている気になりますね (2018年9月8日 15時) (レス) id: 01f6b2b9ab (このIDを非表示/違反報告)
トミ - すごく吸い込まれるようなお話で…次を読むのが楽しいです。 (2018年6月30日 23時) (レス) id: 3237980cf6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年5月29日 17時
