第１２２話 ページ42
第１２２話
私は、この光景を知っている気がする。
どこからともなく感じる既視感に違和感を感じつつも、そんな事よりと焦凍さんに目を向けた。
この人が何をしようとしているのか分かってしまったから。カツン…カツン…とゆっくり近づいてくる焦凍さんに、もう一度『やめてください』と言おうとして口を開く。
「この男は、放っておけばまた必ずAを傷つける。だからそいつは…」
でも、焦凍さんの顔を見て言葉が出なくなった。
月が雲から顔を出し月明かりが私達のいる場所を少しだけ明るくすると、彼の顔がより一層よく見える。彼は言葉を詰まらす私の直ぐ目の前まで来ると、色の違う両目で私の後ろで気絶している男を見下ろした。
……ゾッとする。
光を失い冷たくなった瞳。もう何度も私はこの瞳を色んなことろで、いろんな人で見てきた。見覚えのあるコレはまさに…サイコパスの瞳。
「っ……」
嫌だ、嫌だ…焦凍さん。
「……もう、殺すしかねぇだろ」
迷いなんて微塵も感じられない。
この男を殺す事に、なんの躊躇もないと。
人を殺せば焦凍さんは二度と表舞台で生活なんて出来なくなる。ヒーローなんて、出来なくなる。
スッ…と焦凍さんが男に向けて左手を掲げた。男に向ける冷たく凍えた焦凍さんの瞳の奥は、嫌悪…憤怒…憎悪、そんな感情で埋め尽くされている。
やめて、お願い…お願いっ…！
「焦凍さん…！！！」
やっとの思いで出た私の大きな声に、焦凍さんの手がピクッと反応する。私の声が届いた…そう思った瞬間、倉庫の出入口で爆発音がした。
何事かと私達がそちらを見ると、そこにいたのは鋭い目をした爆豪さんと複雑な表情の緑谷さん。
「やっと見つけたぞ…半分野郎」
「お前ら……なんでここが」
「轟くんが必死な顔で走ってるのを見かけて、追いかけてたら此処に…」
「もう逃がさねぇぞクソが」
２人の登場にホッとする私とは裏腹に、焦凍さんは怪訝な顔で２人を睨みつけた。そして２人に背を向けると「…話なら後で聞く、今は邪魔するな」と再び男をみおろす。
「誰がてめぇなんかの言葉聞くかよ…っとに、めんどくせぇ面になりがって」
「轟くん…今の君を放置しておく事は出来ない」
「はあ？なんの話を…」
「だって君は、Aちゃんの個性に飲まれてる」
緑谷さんの言葉に焦凍さんが目を見開いた。
紛うことなきサイコパスの瞳。
焦凍さんは、もう…
私と一緒に居てはいけない。
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m(プロフ) - 本当に素晴らしく感動して涙が出ました。素敵な作品、素敵なイラストありがとうございました。 (2021年8月30日 17時) (
レス) id: 2635dac9cc (このIDを非表示/違反報告)
Yuu(プロフ) - 素晴らしい作品をありがとうございます。ここ三年間くらい感動することは久しく無かったのですが、久しぶりに感動しました。ありがとうございます。 (2021年6月22日 21時) (レス) id: 375d648123 (このIDを非表示/違反報告)
名無し8446号(プロフ) - ガチで泣きました。 (2021年5月28日 14時) (レス) id: 300e87c18e (このIDを非表示/違反報告)
おーしゃんびゅー(プロフ) - (続き)作品がいいオチな分、考察が止まらず恐ろしいことを考えてしまいました(笑)長々と失礼しました。 (2020年11月22日 20時) (レス) id: 8df8463d93 (このIDを非表示/違反報告)
おーしゃんびゅー(プロフ) - (続き)夢主の個性によって轟くんの欲が増幅→夢主と逃げる→夢主が死ぬと考えると、個性によってサイコパスにならなければそのまま病院にいて、夢主は死ななかったのでは？と考えました。そうなると夢主の個性＝不幸にするということになり、振り出しに戻ります。 (2020年11月22日 20時) (レス) id: 8df8463d93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年6月17日 10時
