第１１７話 ページ37
第１１７話
「ならば問題は…恐怖という理性がなぜ人質になかったかだ」
そして警察は再び爽風ちゃんについてが載っている資料を手に取ると、僕達の前に掲げる。
「斎藤A…理性を失わせるサイコパスという個性。生き残ったのが彼女だけというのも鑑みて、恐らく無関係ではないだろう」
「Aは関係ねぇだろ」
「……轟くん」
僕の隣に座る轟くんが怒りも含まれているであろう怪訝そうな顔で警察官を睨んだ。気持ちは分かる、でも…。
「先程彼女のプロフィールを紹介したように、これまで彼女の個性でサイコパス化した事例もある」
「だからって…」
「去年の12月から犯罪率が急に上昇したのは認知しているね？」
確かに、２ヶ月前から何故か犯罪率が上昇していた。細かい犯罪も含めるとここ２ヶ月でおよそ３倍にもなっている。僕達ヒーローも不思議に思ってはいたけど…。
すると警察官は一冊の雑誌を取り出す。それは以前轟くんが表紙になった12月号のファッション雑誌。
「この雑誌には斎藤Aも載っている。あくまで推察ではあるが、恐らく彼女の個性は画像や映像でも効果があるのだろう。そして最近の犯罪者の中にもこの雑誌を見た者が多かった。犯人率が上昇した時期を考えると、偶然とは言い難い」
僕らはきっと、甘く見ていたんだ。
彼女のサイコパスという個性が、どれほど危険かと言う事に。この先…もしも彼女の存在が公になれば、数値だけで見ても恐らく１年で犯罪率は過去最高を記録するだろう。
「彼女の存在は危険すぎる」
「……さっきから何なんだ」
轟くんの絞り出すような声が静かに響く。地を這うような低い声に、僕はゴクリと息を飲んだ。
「Aの個性は確かにサイコパスだ、その個性で被害が出たのも分かる。けどそれはアイツの意思じゃねぇ…」
「この際、本人の意思どうこうは関係ない」
なによりも…と警察官は続ける。
「彼女本人は、個性が暴走した自覚があるみたいだがね」
「っ…！？」
Aが…と目を見開く轟くんに警察官は溜息を吐き、声を張り上げた。
「斎藤Aの個性は危険であると判断し、警察の保護下に置く事となった。彼女を一般市民の前に出すわけにはいかない。よって…彼女を警察の隔離病棟施設に移送する」
……隔離、病棟。
それしか方法がないのだとしても、あまりに悲しい結末。恐る恐る轟くんを見てみると、轟くんは絶望的な現実に言葉を失っていた。
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m(プロフ) - 本当に素晴らしく感動して涙が出ました。素敵な作品、素敵なイラストありがとうございました。 (2021年8月30日 17時) (
レス) id: 2635dac9cc (このIDを非表示/違反報告)
Yuu(プロフ) - 素晴らしい作品をありがとうございます。ここ三年間くらい感動することは久しく無かったのですが、久しぶりに感動しました。ありがとうございます。 (2021年6月22日 21時) (レス) id: 375d648123 (このIDを非表示/違反報告)
名無し8446号(プロフ) - ガチで泣きました。 (2021年5月28日 14時) (レス) id: 300e87c18e (このIDを非表示/違反報告)
おーしゃんびゅー(プロフ) - (続き)作品がいいオチな分、考察が止まらず恐ろしいことを考えてしまいました(笑)長々と失礼しました。 (2020年11月22日 20時) (レス) id: 8df8463d93 (このIDを非表示/違反報告)
おーしゃんびゅー(プロフ) - (続き)夢主の個性によって轟くんの欲が増幅→夢主と逃げる→夢主が死ぬと考えると、個性によってサイコパスにならなければそのまま病院にいて、夢主は死ななかったのでは？と考えました。そうなると夢主の個性＝不幸にするということになり、振り出しに戻ります。 (2020年11月22日 20時) (レス) id: 8df8463d93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年6月17日 10時
