第１１１話 ページ31
第１１１話
そして季節は、いよいよ２月になった。
まだ肌寒さは続いているが先月よりはずっとマシで、街は赤やピンクといった華やかな飾りで溢れている。これは２月のビッグイベント、バレンタインの季節だからだ。
私も焦凍さんにあげてみようかな…と少しソワソワした気持ちで学校帰りに街を歩く。
バレンタインなんて学校の生徒がやっているのを遠くから眺めた事しかなかった。自分からそういう物を渡したいと思えるなんて、そして渡したいと思える相手がいる事に幸せを感じる。
「……手作りの方がいいのかな」
そっちの方が喜んで貰えるんだろうか。
なんて考えながら歩いていると、銀行の前に落ち着かない様子でウロウロとしている男性がいた。不思議に思いながらその横を通ろうとする。
「いやでもッ…俺には無理だ、やめようッ！」
だが男が急に方向転換をし横を通ろうとした私にぶつかった。その勢いで私はその場に尻もちをつき、男性は「す、すまない…大丈夫かい？」と手を差し伸べる。
「はい…大丈夫です」と男性の手を借り立ち上がってその男性を見た瞬間、私の目が見開かれた。
「………ああ、そうか…大丈夫ならよかった。僕も何だかいける気がするよ。そうさ、僕なら大丈夫だ…やらなきゃいけないんだ」
男の様子が明らかに変わった。
私を見るなり、触れるなり、疲れきった瞳にあった光が消え…冷たい瞳になったのだ。私はあの目を知っている。何度も見た目だ、間違いない。
彼は私に触れ、サイコパスになったのだ。
男は先程までの落ち着かない様子から一変して、何かを決意し落ち着いた様子で銀行の中へと入っていった。このままではいけない…私の全身から冷や汗が流れる。
「待って……！」
男を止めようと銀行に入り追いかけるが、時すでに遅く…男は服の内ポケットから黒い拳銃を取り出し受付の女性に銃口を突き付ける。
「今すぐ出入口を全て閉鎖し、このバックの中にありったけの金を詰めろ！！」
受付の女性は恐怖で体を震わせながら出入口全てにロックをかけた。恐らくヒーローや警察が直ぐに駆けつけてきた時のことを考え、職員や客を人質にする為だろう。
人質は一人でも多い方がヒーローや警察の足止めをしやすいからだ。
「一人でもおかしな行動をしたら一人ずつ殺していくからな！！分かったか！！！」
私の撒いた種が…
この場を恐怖で支配していく。
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m(プロフ) - 本当に素晴らしく感動して涙が出ました。素敵な作品、素敵なイラストありがとうございました。 (2021年8月30日 17時) (
レス) id: 2635dac9cc (このIDを非表示/違反報告)
Yuu(プロフ) - 素晴らしい作品をありがとうございます。ここ三年間くらい感動することは久しく無かったのですが、久しぶりに感動しました。ありがとうございます。 (2021年6月22日 21時) (レス) id: 375d648123 (このIDを非表示/違反報告)
名無し8446号(プロフ) - ガチで泣きました。 (2021年5月28日 14時) (レス) id: 300e87c18e (このIDを非表示/違反報告)
おーしゃんびゅー(プロフ) - (続き)作品がいいオチな分、考察が止まらず恐ろしいことを考えてしまいました(笑)長々と失礼しました。 (2020年11月22日 20時) (レス) id: 8df8463d93 (このIDを非表示/違反報告)
おーしゃんびゅー(プロフ) - (続き)夢主の個性によって轟くんの欲が増幅→夢主と逃げる→夢主が死ぬと考えると、個性によってサイコパスにならなければそのまま病院にいて、夢主は死ななかったのでは？と考えました。そうなると夢主の個性＝不幸にするということになり、振り出しに戻ります。 (2020年11月22日 20時) (レス) id: 8df8463d93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年6月17日 10時
