第１０８話 ページ28
第１０８話
「私は、もう…焦凍さんをただの家族として見れないんです！！」
「……どういう、ことだ」
私の方を振り返らず絞り出すように言った焦凍さんの声は、酷く弱々しく震えている様な気がした。押し潰されそうな、不安気な声。
この人の背中は…こんなに弱々しかったっけ。
「……ずっと、焦凍さんは大切な家族でした。私にとって暖かい時間をくれる、大切な家族」
でも、とまた一層焦凍さんの服を握る手に力を込める。そんなに強く握ったらシワになってしまうのに、どうしても力が入ってしまう。
…私も、怖くて堪らないのだ。
想いを伝える事って、こんなに怖いのか。
「だけど焦凍さんと過ごす日々が積み重なっていくうちに、少しづつ色んなことが変わって…」
焦凍さんと出会ってから変わった。
色んなものに、風景に、感情に
色がついていくようだった。
モノクロの世界が
艶やかに…色づく。
「私にとって貴方は…焦凍さんは、何ものにも変え難い大切な存在になったんです」
「っ……」
「ただの家族じゃなく、もっと深くて大切な…」
家族だからじゃなく
恩人だからじゃなく
焦凍さんだから、私は…
「……愛する人に、なっていたんです」
貴方を好きになりました。
不安で心が押し潰されそうだ。焦凍さんの声を聞くのが怖い、何と言われるのか分からなくて怖い。
私にとって一番大切な人。そんな彼に拒絶されたらとても悲しい。悲しいに決まっている。だけど好きだから受け入れてくれ、なんて我儘は言えない。
どう受け止めるかは、焦凍さんの自由だから。
「…………A」
「分かってます！分かってますっ…私の気持ちの問題だから、焦凍さんに受け入れて貰えなかったとしても私は絶対に貴方の幸せを願い続ける」
「……A」
「貴方には幸せになって欲しい。例え、焦凍さんが幸福になる未来に私は必要ないのだとしても…それでも私は、貴方が幸せな未来を望みたい」
「…A」
「それでも……もし叶うなら、受け入れてくれなくてもいいから、貴方の人生の片隅でいいから」
焦凍さんの人生の中で
ただのモブでもいいから
どうか、側に…
「……焦凍さんの、側に」
「待ってくれ」
側にいたい。
そう言おうとした私の言葉を焦凍さんが遮った。その瞬間、私の心臓がまるで凍えた手で掴まれたかの様な感覚になる。
それ以上聞きたくない、って事なんだろうか…と。
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m(プロフ) - 本当に素晴らしく感動して涙が出ました。素敵な作品、素敵なイラストありがとうございました。 (2021年8月30日 17時) (
レス) id: 2635dac9cc (このIDを非表示/違反報告)
Yuu(プロフ) - 素晴らしい作品をありがとうございます。ここ三年間くらい感動することは久しく無かったのですが、久しぶりに感動しました。ありがとうございます。 (2021年6月22日 21時) (レス) id: 375d648123 (このIDを非表示/違反報告)
名無し8446号(プロフ) - ガチで泣きました。 (2021年5月28日 14時) (レス) id: 300e87c18e (このIDを非表示/違反報告)
おーしゃんびゅー(プロフ) - (続き)作品がいいオチな分、考察が止まらず恐ろしいことを考えてしまいました(笑)長々と失礼しました。 (2020年11月22日 20時) (レス) id: 8df8463d93 (このIDを非表示/違反報告)
おーしゃんびゅー(プロフ) - (続き)夢主の個性によって轟くんの欲が増幅→夢主と逃げる→夢主が死ぬと考えると、個性によってサイコパスにならなければそのまま病院にいて、夢主は死ななかったのでは？と考えました。そうなると夢主の個性＝不幸にするということになり、振り出しに戻ります。 (2020年11月22日 20時) (レス) id: 8df8463d93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年6月17日 10時
