第１０６話 ページ26
第１０６話
「…ごちそうさまでした」
手を合わせ食べ終わった皿を流し台に持っていくAを目で追いながら、俺も食べ終わった皿を運びやすい様に積み重ねる。
あのまま俺達は買い物を済ませ家に帰った。夕食の準備やら風呂に入ったりしていると、あっという間に夜も更けていった。
「焦凍さん、お茶要りますか？」
「悪ぃ、頼む」
俺のコップの中のお茶が少ない事に気が付きAがお茶を注いだ。気配りも出来て、Aは個性や環境に恵まれてさえ居れば…それなりに友人や恋人の１人や２人出来ていただろう。
出会い方が違ったとしても、俺はAを好きでいたんだろうか。
コポコポッ…とお茶を注ぐ音が鮮明に聞こえた。それは普段から静かな方であるお互いが、いつにも増して静かだからだ。
『帰ったら、大事な話をしてもいいですか？』
昼間に言ったAの言葉。
落ち着いた優しい声色の中に、真剣さもあった。だから正直、俺もかなり気になっている。
そして家に帰ってから俺達の間の空気が変わった。お互いどこかソワソワしていて、その理由は明白なのにお互い話を切り出そうともしない。
「そういや、Aの部屋の電球が切れかけてたな。今の内に変えちまっていいか？」
「あ…はい、よろしくお願いします」
軽く頭を下げるAに相変わらず律儀だな、と思いながら新しい電球を棚から取り出しAと一緒に部屋へ行く。
歩く度に少しだけ軋む木材の床。
Aの部屋に入ると古い電球を取り外し新しい物に変えた。「すみません…」と言うAに「こういのは普通に頼れ」と返す。流石にAの身長じゃ届かねぇから仕方ねぇ事だろ。
「…これでよさそうだな」
電気を付け替え、きちんと電気が着くことも確認し再び電気を消して「リビングに戻るか」と言うとAは頷いて先に部屋を出ようと背中を向ける。
俺も続いて部屋を出ようとした時、ふと視界の片隅で部屋の隅に置いてあるダンボール箱が目に入った。
さほど大きくもないダンボール箱の上には、黒い手紙の様なものが添えられてある。
あんなもん、最近までなかったような…。
何となく気になり箱に近づくと黒い手紙を手に取り中を見てみる。そこには、真っ黒な紙に白い文字で『死ね』という二文字が書かれていた。
あまりにも衝撃的な文字に俺の目が見開かれる。
「…………なんだ、これ」
「焦凍さん何して……あっ」
.
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m(プロフ) - 本当に素晴らしく感動して涙が出ました。素敵な作品、素敵なイラストありがとうございました。 (2021年8月30日 17時) (
レス) id: 2635dac9cc (このIDを非表示/違反報告)
Yuu(プロフ) - 素晴らしい作品をありがとうございます。ここ三年間くらい感動することは久しく無かったのですが、久しぶりに感動しました。ありがとうございます。 (2021年6月22日 21時) (レス) id: 375d648123 (このIDを非表示/違反報告)
名無し8446号(プロフ) - ガチで泣きました。 (2021年5月28日 14時) (レス) id: 300e87c18e (このIDを非表示/違反報告)
おーしゃんびゅー(プロフ) - (続き)作品がいいオチな分、考察が止まらず恐ろしいことを考えてしまいました(笑)長々と失礼しました。 (2020年11月22日 20時) (レス) id: 8df8463d93 (このIDを非表示/違反報告)
おーしゃんびゅー(プロフ) - (続き)夢主の個性によって轟くんの欲が増幅→夢主と逃げる→夢主が死ぬと考えると、個性によってサイコパスにならなければそのまま病院にいて、夢主は死ななかったのでは？と考えました。そうなると夢主の個性＝不幸にするということになり、振り出しに戻ります。 (2020年11月22日 20時) (レス) id: 8df8463d93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年6月17日 10時
