第１０３話 ページ23
第１０３話
「……話って、何でしょうか」
話をしようと連れてこられたのは近くの喫茶店。焦凍さんが戻ってくる前には出たいから、あまり長居をするつもりはない。
警戒心と緊張感を隠せない私をクスクスと笑いながら見てくる目の前の女性、雨宮さんはグラスに入ったアイスコーヒーをストローで掻き混ぜた。
カランカランッ…と氷がぶつかる音がする。
「昨日のニュース見たかしら？」
その質問に私の肩がピクッと揺れた。
間違いなく、焦凍さんと彼女の恋愛報道の事だろう。それを何故私に聞くのか分からない。
「……はい、知ってます」
「なら話が早いわね」
いい事教えてあげる、と彼女はグラスに刺さっていたストローを抜き取り私にストローの先端を向けた。
ストローの先端からアイスコーヒーの雫が落ちそうで落ちず、ゆらゆらと揺れている。
「私とショートは恋仲ではないのよ」
「え…？」
恋仲じゃ、ない？
「それ、は…どういう」
「言葉のままよ」
つまり、あれは誤報だったという事なのか。そう分かった瞬間、私にのしかかっていた重たい物が消えていくような気がした。
なら昨日の夜に焦凍さんが言った私に話せない事ってなんだったんだろう。
でもそんな事よりも今は、やっぱり…
「安心した？」
「…！」
案外分かりやすい子ね、とまた可笑しそうにクスクスと笑う彼女。なぜこの人は私にそんな事を言いに来たのか。
目線を下げる私を見て、彼女はまた口を開いた。
「私には他に好きな人が居るの、絶対に叶うことの無い恋だけれどね。だから別にショートの事はどうでもいいわ」
でも…、と彼女は続ける。
「貴方が要らないなら、私に頂戴よ」
ふっと息が詰まった。この人は何を言い出すんだ、とかそんな事より心臓を叩かれた様な感じだ。
彼女の迷いのない言い方のせいだろうか。
「私は……」
でも、私の心は落ち着いている。
「焦凍さんが好きです。あの人が幸せになる未来に私は必要ないのだとしても、それであの人が幸せなら嬉しい」
「…………」
「私が焦凍さんを必要としなくなる日が来ても、私からあの人を貴方へあげることは出来ません。誰と歩んでいくかは、焦凍さんが決める事です」
すみません、と頭を下げる私に彼女はまた笑いながら「面白い子ね、冗談なのに」とアイスコーヒーを飲む。
「そろそろ時間かしら」
「……はい」
「幸運を祈るわ」
.
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m(プロフ) - 本当に素晴らしく感動して涙が出ました。素敵な作品、素敵なイラストありがとうございました。 (2021年8月30日 17時) (
レス) id: 2635dac9cc (このIDを非表示/違反報告)
Yuu(プロフ) - 素晴らしい作品をありがとうございます。ここ三年間くらい感動することは久しく無かったのですが、久しぶりに感動しました。ありがとうございます。 (2021年6月22日 21時) (レス) id: 375d648123 (このIDを非表示/違反報告)
名無し8446号(プロフ) - ガチで泣きました。 (2021年5月28日 14時) (レス) id: 300e87c18e (このIDを非表示/違反報告)
おーしゃんびゅー(プロフ) - (続き)作品がいいオチな分、考察が止まらず恐ろしいことを考えてしまいました(笑)長々と失礼しました。 (2020年11月22日 20時) (レス) id: 8df8463d93 (このIDを非表示/違反報告)
おーしゃんびゅー(プロフ) - (続き)夢主の個性によって轟くんの欲が増幅→夢主と逃げる→夢主が死ぬと考えると、個性によってサイコパスにならなければそのまま病院にいて、夢主は死ななかったのでは？と考えました。そうなると夢主の個性＝不幸にするということになり、振り出しに戻ります。 (2020年11月22日 20時) (レス) id: 8df8463d93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年6月17日 10時
