第１０２話 ページ22
第１０２話
翌日、日曜日で学校は休み。加えて焦凍さんもたまたま休みだということで、久しぶりに２人で街にでも出かけることとなった。
駅を降りて街中へ着くと行き交う人の多さに少しだけ目が回る。
「なんか、懐かしいな」
「…え？」
焦凍さんの唐突な言葉に私は首を傾げる。すると彼はフッと薄く微笑みながら、駅前に植えられている一際大きな木に目線を移した。
私も焦凍さんの視線を追いかけるようにその木を見ると、彼はゆっくり口を開く。
「クリスマスの時、あの木がクリスマスツリーになってるの２人で見ただろ」
「あ…そっか、あの時の木なんですね」
まだあの時から１ヶ月しか経っていないのに、確かになんだか懐かしく感じてしまう。
そう、あの日あの場所で私は焦凍さんが好きなのだと、何よりも大切な存在なのだと気がつけた。焦凍さんのとこはずっと大切だったけど、あのクリスマスの日その大切の意味が少し変わったのだ。
家族として大切だった今までから、焦凍さんだから大切なんだと思えるようになった。
「あの日、Aが言いかけてた事あるよな」
「…………それ」
「前は言わなくていいって言ったけど、今はちゃんと聞きてぇと思ってる」
だから、と焦凍さんが私の目を真っ直ぐに見る。
「続き、聞かせてくれねぇか？」
ドクンッ…と心臓が大きく跳ねた。私達の周りを歩く人が背景に見え、騒音が遠くに感じる。
でも私は焦凍さんになんて言えばいいんだろう。恋人がいる彼に、あなたが好きですなんて言えない。
きっと困らせてしまう。
「あ、あの……私」
その時だった。遠くの方で「きゃあ！！万引きよ、お願い誰か捕まえて！！」と悲鳴が聞こえ私も焦凍さんもハッとする。
まるで現実に引き戻された様に、風景に見えていた人も騒音も元に戻った。
「悪ぃ、続きは後にするか。ちょっと行ってくるから待っててくれ」
「は、はい」
流石はヒーローというべきか。そんなに近くもないのに助けを求める声に向かって走っていった。
なぜだか私はホッとして溜息を吐く。
「本当にそれでいいの？」
「っ！？」
突然背後から声をかけられ振り向く。
そこに居たのは、見覚えのあるとても綺麗で可愛らしい女性。
「あなたは……」
テレビで見た、あの人。
焦凍さんと一緒にいた、女優の…。
「少し一緒にお茶でもしましょうよ」
彼女の不敵な笑に、私は息を飲み込んだ。
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m(プロフ) - 本当に素晴らしく感動して涙が出ました。素敵な作品、素敵なイラストありがとうございました。 (2021年8月30日 17時) (
レス) id: 2635dac9cc (このIDを非表示/違反報告)
Yuu(プロフ) - 素晴らしい作品をありがとうございます。ここ三年間くらい感動することは久しく無かったのですが、久しぶりに感動しました。ありがとうございます。 (2021年6月22日 21時) (レス) id: 375d648123 (このIDを非表示/違反報告)
名無し8446号(プロフ) - ガチで泣きました。 (2021年5月28日 14時) (レス) id: 300e87c18e (このIDを非表示/違反報告)
おーしゃんびゅー(プロフ) - (続き)作品がいいオチな分、考察が止まらず恐ろしいことを考えてしまいました(笑)長々と失礼しました。 (2020年11月22日 20時) (レス) id: 8df8463d93 (このIDを非表示/違反報告)
おーしゃんびゅー(プロフ) - (続き)夢主の個性によって轟くんの欲が増幅→夢主と逃げる→夢主が死ぬと考えると、個性によってサイコパスにならなければそのまま病院にいて、夢主は死ななかったのでは？と考えました。そうなると夢主の個性＝不幸にするということになり、振り出しに戻ります。 (2020年11月22日 20時) (レス) id: 8df8463d93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年6月17日 10時
