第６６話 ページ26
第６６話
１１月下旬に差し掛かってきたある日の夜。
私は仕事が早く終わった焦凍さんと一緒に街へ出ていた。「何が食いたい？」という焦凍さんの問に私は相変わらず「え、と…特には」と答える。
食に対する拘りがないとはいえ、毎回この答えだから何だか申し訳なくなる。それでも焦凍さんは何も文句なんて言わず「じゃあ和食にするか」と決めてくれた。
先日の、心臓か肺あたりが締め付けられる感覚。あれは結局なんだったんだろう。
『俺もお前のそういう所、好きだ』
あれは純粋に褒められたんだよね。
でもあの言葉が、あの熱の篭った低い声が、何故か頭から離れない。なんていうか……色っぽい声だった。焦凍さんのあんな声、初めて聞いたかも。しかもあんなに耳の近くで。
そう思うと少し恥ずかしくなる。焦凍さん相手に何を考えてるんだろう、私は。
「A…？」
「へっ、ぇ、あ…はい」
「ボーッとして、どうかしたのか？」
「…いえ、何でもないです」
そんな私のか細い声と被るように「あれ？轟くんとAちゃん？」と背後から呼び止められる。
「……緑谷さん？」
「こんばんは、なんか久しぶりだね」
声をかけてきたのは緑谷さんで、焦凍さんが「仕事帰りか？」と聞くと「うん、今から帰るところ」と答えた。相変わらず温厚そうな雰囲気なのが、何故か見てるだけで安心感を貰える。
「なら緑谷も一緒に飯行くか？」
「え、でも折角２人でご飯行くのに…」
「私は大丈夫ですよ」
そういうと緑谷は少し目をぱちくりさせた後、少し申し訳なさそうに、でも嬉しそうにニコッと笑うと「じゃあご一緒しようかな」と言った。
改めて３人で歩こうとした…その時。
「おおっ、ショートくん！」
突然見知らぬ男性が焦凍さんの名前を呼びながら駆け寄ってくる。スーツを着た、私の知らない男性。
焦凍さんは「…お久しぶりです」と小さく頭を下げる。仕事関係の人かな、と私が頭を傾げると緑谷が私に「轟くんの事務所のスポンサーだと思う」とコソッと耳打ちをした。
「すまないが、今から仕事頼めるかい？」
「え…仕事って」
「モデルが一人足りなくてね、困ってるんだ」
何の話だろう。
邪魔はしない方がいいかな、と少し後退りする私に緑谷さんが「そっか…あの人」と呟く。
「某有名雑誌のプロデューサーだ」
「……雑誌？」
「うん、轟くんの事務所のスポンサーで結構お世話になってる所だと思うよ」
．
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風鈴 - 誤字ってますが気にしないでください。「いままだ」になってますが正しくは「いままで」です！すいません。 (2021年11月27日 23時) (
レス) id: 19b3aa7f76 (このIDを非表示/違反報告)
風鈴 - めっちゃ好きです！イラストもとても好きです!!何時もつづきをわくわくしながら見させてもらってます。あと、他の作者様に失礼なのですが、いままだ見て来た小説でこの作品がいちばん好きです。勿論他の方の作品も大好きです！長文失礼しました。 (2021年11月27日 23時) (レス) id: 19b3aa7f76 (このIDを非表示/違反報告)
花 - シリアスの中にも"愛"が詰まってる感じで良き (2021年5月19日 20時) (レス) id: 5a0f0dfb22 (このIDを非表示/違反報告)
ひめたん - 好み過ぎる (2018年9月5日 23時) (レス) id: 6ef00c8f07 (このIDを非表示/違反報告)
ららら(プロフ) - 絵が、！！！すごい好みです！！！漫画書いてほしいくらいです、、笑頑張ってください！！ (2018年6月18日 17時) (レス) id: 67811c0872 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年6月3日 18時
